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EU離脱

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Category: EU離脱

イギリスのEU離脱で生じる事業機会

最近ランチを一緒にした日本人駐在員が、次のような話をしてくれました。イギリス人の同僚が、EU離脱が決まった後のショックからすぐに立ち直り、EU離脱の結果として生じる事業機会について、すぐさま考えるようになったので驚いたというのです。私自身もポジティブ思考を心がけていて、在英日系企業の今後についてリサーチを開始しています。これまでに特定できた事業機会は、次の3点に分けられそうです。

アフリカと中東

イギリスは歴史的にアフリカおよび中東との太いパイプを有してきたため、この地域の事業活動をコーディネートする拠点としては今後も好適地であり続けるでしょう。アフリカや中東の出身者、およびこれら市場の専門家がイギリスには多数いて、情報や管理能力をもたらしてくれます。

また、イギリス政府は、非EU諸国との貿易拡大を図ることで、EU離脱のマイナス影響を相殺しようとするでしょう。このため、アフリカや中東の事業開発に対して多大な支援が寄せられる可能性があります。

アフリカや中東の出身者をイギリス国内で雇い入れることも、以前より容易になるかもしれません。イギリス国民がEU離脱に票を投じた背景には、移民の抑止がありました。しかしこれは、主に東欧からの非熟練労働者の流入に対する反応です。ほとんどの日系企業はそもそもこのような労働者を雇用していませんから、この種の移民の制限が大きな影響を及ぼすとは思えません。

日本の金融サービス企業はすでに、イギリス以外の支店のステータスをEU支店または現地法人に変えていて、さらにアフリカ事業を強化しつつあります。しかし、これらの事業拠点は今後もロンドン・オフィスが管轄し、ロンドンがEMEAのコーディネーション機能を果たすと見られます。

日本のメーカーは、かねてより非熟練労働集約型の生産活動を東欧やアフリカに移動させてきました。イギリスのEU離脱でこのトレンドは加速し、イギリスはエンジニアリングや設計・開発を専門とする地域内のハブになるでしょう。

インフラストラクチャ

製造業が東や南(東欧やアフリカ)へ移動しつつあるとはいえ、イギリス政府は、高賃金で安定した肉体労働の雇用をイギリスに呼び戻さなければならないことを十分に認識しています。これを実現する最も明らかな方法と言えば、輸送交通やエネルギーといったインフラへの公的投資です。日立や他のインフラ関連企業は、この部分で多数の事業機会を見つけられるでしょう。ただし、エネルギーや輸送交通の開発プロジェクトに流れてきたEUからの予算が今後どうなるのかは明らかではありません。

イギリス企業の買収

ソフトバンクによるARMの買収が示したように、イギリスには買収標的として依然魅力のある企業が多数あります。単一市場への入口としてではなく、ブランドや技術やノウハウの点でユニークな特長がある企業です。例えば、イギリスの食品・飲料ブランド、保険市場ロイズのアンダーライター、イギリスの広告代理店などが、最近になって日本企業に買収されています。円高・ポンド安は今後もしばらく続きそうですから、勇気のある会社には“お値打ち品”が見つかるかもしれません。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2016年9月14日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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イギリスがEUを離脱するなら日系企業はどうすべきか

ノリッチに引っ越したのは今から2年弱前のことですが、こちらに来るなり驚かされたことがありました。当地の新しい税理士さんから「この辺りではユーロは取り扱いませんよ」と言われたのです。私の会社の売り上げの3分の1はユーロです。このため、ビジネスにとって良い場所を選んだのだろうかと不安を覚えずにはいられませんでした。私の主な顧客である日系企業がこの地域にあまりないのは事実です。でも、地域内には食品加工や風力発電など、イングランド東部の産業を反映する企業があります。

また、ノリッチはロンドンへのアクセスが至便です。こうしたことから、最近日本の保険会社に買収されたロンドンの会社から仕事を受けて、先月ベルギーへ行ってきました。

この出張中にはブルッヘを訪れてきました。ノリッチに似た側面があることに興味を覚えたからです。どちらも中世に栄えた川沿いの港町で、地元で作られた衣類の貿易が盛んでした。けれども産業革命に乗り遅れ、川の流れが淀んだ後は貿易も衰退しました。現代の産業には相違点があり、ブルッヘが主に観光経済で成り立っているのに対し、ノリッチには多様な産業があり、保険や他の専門サービス業界に入り込んでいます。

ブルッヘは、1988年に当時のサッチャー首相がさらなる欧州統合に反対する有名な演説をした場所です。この演説にちなんでブルッヘ・グループという名前を冠した団体が、最近ではイギリスのEU離脱を求める運動を展開するようになりました。

EU離脱派は、離脱こそが政治や規制に対する欧州からの干渉に終止符を打つ手段であると考えています。しかし、普通のイギリス人には、イギリスの国境を守り、特に欧州からのさらなる移民の流入を食い止める手段だと説明したほうが理解されやすいでしょう。

イギリス東海岸の他の港町は、ノリッチほど景況が芳しくありません。失業率が高いにもかかわらず、欧州から多数の人が流れ込んで、作物の収穫や食品の加工に携わっています。EU離脱を支持しているイギリス独立党は、この地域に強い支持基盤を有しています。彼らは、欧州からの移民がイギリス人の職を奪っていて、賃金を抑え込み、学校や病院に負担をかけているという見方を訴えています。

では、イギリスがEUを離脱することになった場合、日系企業はどうすべきなのでしょうか。おそらく、イギリスが業界の中心地である、あるいはイギリス市場そのものに魅力があるという理由でイギリス拠点に投資してきた企業は、今後もイギリスに留まるでしょう。しかし、イギリスを拠点に欧州全域の事業を展開している企業は、移転したり今後の投資を大陸欧州に傾けたりすることを検討するかもしれません。

欧州が過去40年にわたって追求してきた共通市場の形成と移動の自由を受けて、ほとんどの多国籍企業は組織構造を統合してきました。イギリスは、欧州本社機能のハブになることで、直接雇用と間接雇用の両方を生み出し、恩恵を受けました。が、この結果、ロンドンの事業経費は高騰し、雇用は東へ流れるようになりました。イギリス東部だけでなく、ポーランドといった国にまで及んでいます。私自身もポーランドでコンサルタントを雇い入れようとしている最中ですが、皮肉なことに、候補者のほとんどはイギリスで働いた経験を有しています。

Pernille Rudlin著 帝国データーバンク・ニュースより

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バルカン諸国とヨーロッパ

去年の夏、アドリア海で休暇を楽しんだ時のこと。クロアチアの観光名所、クルカ川の滝へ向かう途中で、ツアーガイドが突然、「クロアチアのバルカン側に入 りました」と言ったのです。バルカンという言葉は、歴史を知っているヨーロッパ人にとって多くのことを意味します。ユーゴスラビア紛争から約20年という だけでなく、第一次世界大戦から約100年。第一次世界大戦は、オスマン帝国やオーストリア=ハンガリー帝国の衰退とともに域内の地域や国家が互いに対立 する小さな地域や国家に分裂していった「バルカニゼーション」が一因となって勃発したとされています。私たちのガイドは明らかに、クロアチアがバルカン諸国というだけでなく地中海諸国でもあり、ゆえに近代ヨーロッパの一員であるということをアピールしようとしていました。

第二次世界大戦後、対立していたバルカン諸国は部分的にソビエト連邦の下で再統一されました。おかげで私の世代のヨーロッパ人のほとんどは、アドリア海が ユーゴスラビアの一部であり、安いけれども快適な保養地だと記憶しています。ユーゴスラビアは、友好的なソビエト衛星国の成功例のひとつとされていまし た。ですから、それが解体して内戦に陥った時、西欧の人はショックを受けたものです。

クロアチアは2013年、EUに加盟した最新の国になりました。旧ユーゴスラビア連邦の他のバルカン諸国であるマケドニア、セルビア、モンテネグロは公式な加盟候補国で、ボスニア・ヘルツェゴビナは「潜在的な加盟候補国」と見なされています。

ギリシャの危機とイギリスの離脱をめぐる国民投票でEU自体の崩壊の危険が取り沙汰されるなか、バルカン半島の候補国は、EU加盟が実際のところどんなメ リットをもたらすのかと案じているに違いありません。最近の歴史があることから、これらの国にとって、経済協力を通じて戦争を防止するというEU本来の狙 いは今も意味があります。

でも、経済協力のメリットはそれほど明らかではありません。EUに遅れて加盟するということは、多国籍企業の大規模な地域投資を逃すことを意味するという ことが、クロアチアの最近の加盟で明らかになりました。バルカン諸国の人口と経済規模は比較的小さいため、これら諸国に子会社を開設するほどの投資を誘う インセンティブはあまりありません。現地代理店を通じて、またはドイツやポーランドの地域拠点から、これらの市場を容易にカバーできるのです。

クロアチアは今も造船業が盛んで、国の輸出高の10%を構成しています。が、国の経済を支える主要産業は、これまでどおり観光業になると認めざるを得ませ んでした。日本からのツアーグループもたくさん来ていました。私たち同様、日本人観光客も、クロアチアの古い街並みの美しさと歴史に魅了され、新鮮な魚介 類に舌鼓を打ち、通りや建物が清潔でよく手入れされていることに感心したことでしょう。何よりも私の印象に残ったのは、出会ったクロアチアの人たちが皆、 とても仕事熱心で、テキパキとしていて、礼儀正しく、誠実で、学もあり、英語も上手で、陽気な人たちだったことです。クロアチア市場は外国投資にとって魅 力的ではないかもしれませんが、クロアチアの労働力は間違いなく魅力的です。

バルカニゼーションという言葉が新しい意味を持つような未来、すなわちバルカン諸国の人たちが欧州の単一市場に貢献し、そこからメリットを受けられる未来 に向かってヨーロッパが進んでいけることを願うばかりです。古くからの定義に基づく解体が敵意に満ちた民俗浄化による国家を生み出し、EUが本来防止しよ うとしたタイプの戦争に再びつながらないことが、私の希望です。

Pernille Rudlin著 帝国データーバンク・ニュースより

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EU終焉を招きかねない難民問題

イギリスがEUを離脱することになれば、多くの多国籍企業が現在イギリスに置いている欧州本社を他の国へ移すだろうと私が最近言った時、ギリシャ系イギリス人の知り合いは、イギリスは一国でも問題なくやって行けると言いました。いわく、負担の多いEUの規制がないほうがよく、ヨーロッパにおける地位が何であれ、イギリスのように革新性に富んだ国には企業が集まってくるというのです。

ギリシャに対するEUの処遇を見てきた後で、この知人の見方は驚きではないかもしれません。EUの規制が多すぎるという不満は、イギリス国内にも以前から渦巻いています。けれども、芝刈り機の音量に対して設けられたEUの基準に見られるとおり、これらの規制はしばしば、イギリスのメーカーに有利なようにと、イギリスの官僚が主張してきたのです。一般にメーカーにとって、EU域内に工場を置くことの利点は、EUの基準に適合していれば28か国のどこでも販売認可が下りると安心できることにあります。

イギリスがEUを離脱すれば、EUの規制に影響を及ぼすことはできなくなるにもかかわらず、至近の最大市場で製品を販売したければ、なおもその規制に従わなければならないことを意味します。私をはじめ残留支持派のイギリス人にとってありがたいことに、野党・労働党の新党首が最近、次の国民投票(おそらく来年)でEU残留を訴えるキャンペーンを展開すると語りました。

これについては、今までいくらかの疑念がありました。キャメロン首相がEU加盟国との交渉で、欧州社会憲章を弱めようとしていると見なされているためです。欧州社会憲章は、労働者の勤務時間、休日、差別などについて保護をもたらしてきた規定です。労働党は、名前が示すとおり、労働者の権利を擁護することを基本理念とする党です。このため、EUに残留するためのキャンペーンを決定し、キャメロン首相がEUとどのような合意を取り付けるかにかかわらず、政権に返り咲いた暁には社会的な譲歩をすべて白紙に戻すとうたっています。

フランスやドイツなどEUの中核国が絶対に妥協しないとしている主要点のひとつが、人の移動の自由です。これが実は、多くのイギリス人がEU離脱を望む大きな理由のひとつとなっているのですが、私にしてみれば、イギリスが革新性を維持できるのは、まさに移動の自由ゆえです。多様性が革新を促すことを示す証拠はいくらでも存在し、ロンドンは間違いなくヨーロッパで最も多様な都市のひとつです。ロンドンかその近郊に会社を置けば、驚くほど幅広い国籍の人材にアクセスし、その人たちの視点やスキルを活用することができます。しかも全員の共通語が英語です。

不運なことに、最近の難民問題が移動の自由に対するコミットメントを弱めていて、EUそのものの終焉を招く可能性すらあります。加盟国は、協調して解決策を見つけるのではなく、折しも現在記念日を迎えつつある2つの世界大戦で学んだ教訓を忘れてしまったかのように振る舞っています。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2015年10月14日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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フランス

イギリス政府がEU以外からの移民政策を厳しくしていることで、日系企業のコミュニティはしばらくにわたって影響を受けてきました。来年5月の総選挙に向け、連立政府はイギリスへの移民を数万人単位で削減するという公約をどう果たすのか、その説明を迫られています。政府はEU以外からの移民はコントロールできますが、EU諸国から毎年数十万人とイギリスへ流入してくる移民はコントロールできません。労働力の自由な移動はEUの原則だからです。このため日系企業は駐在員のビザ取得が非常に難しいという状況に陥っています。

EU域内の労働力の自由な移動という原則をないがしろにしようとするのであれば、連立政権は、アンゲラ・メルケル首相が示唆したようにEUを離脱しなければならないかもしれません。EU支持派やイギリス実業界の関係者のほとんどは、EUの改革をさらに押し進め、全欧州にわたる人の移動の原因に対応することを望んでいますが、これは企業と労働の規制のさらなる調和を意味します。一方のEU反対派は、統一的な規制を課すことにはあまねく反対しています。また、フランスやドイツといった国の労働組合は、組合員の雇用保護を脅かしたり国の福利厚生を削減したりする改革には反対するでしょう。

例えば、ロンドンには30万人を超えるフランス人が住んでいると見積もられていて、人口で見れば6位のフランスの都市です。これは若い人たちがフランスでは恒常的な仕事を見つけられず、起業するのも難しいと感じているためだと、通常は説明されています。イギリスのほうがチャンスがたくさんあるのです。

私自身も今年に入ってフランスに事業を拡大したことで、イギリスの制度とは驚くほど異なるフランスの官僚主義と効率化への壁を垣間見ました。例えば、フランス企業に研修コースを販売するには、フランスの登録企業であり、かつ研修提供者として認証を受けた代理人を雇う必要があります。この代理人は、顧客企業にありとあらゆる書類を提出して、顧客企業が国の研修基金から研修税の還付を受けられるようにしなければなりません。このため、私の事業にもかなりの経費と時間が追加されます。

ある日本企業の人から最近聞いた話では、倒産しかかったフランスのソフトウェア会社を買収しようとしたところ、他の企業に買収されるよりもむしろ倒産することを、その会社の社員が選びました。その会社の社員は、倒産すればもちろん失業するのですが、その後も3年間は失業保険で給与の80%を受け取れるうえ、福利厚生もあり、住宅ローンも肩代わりしてもらえるからだそうです。

雇用を創出・維持して能力開発を支援するにはこうした規制や税制が必要だとするフランス流の見方も分からないわけではありません。でも、現実にもたらす効果と言えば、外国企業によるフランスへの大型投資に歯止めをかけることでしかありません。ですから、ビザの状況が厳しくなっているとはいえ、イギリスはなおも企業や個人が好んで選ぶ欧州内の行き先となっているのです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2014年12月10日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

2017年の「新たな目でフランスを見る」もご参照になります。

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スコットランドの独立とEU ― 理知と感情

この記事が発行されるまでには、スコットランドが独立を選んでいるかもしれません。そうなれば、さしづめ「感情が理知を制した」と言えるでしょう。投票1週間前の世論調査では、独立に「イエス」の支持派と「ノー」の反対派がほぼ同数で、迷っている人が多数いました。この決められずにいるという人は、「頭」では独立すべきでないと思っているけれども、「心」が揺るがされている人たちです。グレートブリテン王国となって300年。今また独立して運命を自ら支配するという展望に、心躍るものを覚えている人たちです。

スコットランドとイングランドの企業も、ついに黙っていられない状況になりました。ほとんどは「ノー・サンキュー」の立場ですが、「ノー」は耳障りの良い言葉ではありませんし、その理由は脅迫のようにも聞こえます。独立国スコットランドの未来は不透明です。通貨ポンドを使い続けられるのか、使い続けるとすればどう統制するのかについて、難しい交渉が始まります。EUに加盟できるのか、いつ加盟できるのかに関しても、EUとの交渉を始めなければなりません。

イギリスも来年5月に総選挙を控えていて、保守党はEU離脱か残留かを国民投票にかけると公約しています。EU離脱を唱える独立党が最近の地方選と欧州議会選で躍進したことから、保守党が次期与党となるのであれば、イギリス国民がEU離脱に票を投じる可能性もかなり現実味が増します。

日本のビジネス関係者にとっては、自国の政治経済の安定を覆しかねない行動を国民が支持するとは不思議に見えることでしょう。政治経済の安定があったからこそ、外国投資がイギリスに流入してきたのです。けれども、この安定の歴史こそが、スコットランド人や他のイギリス国民に「なんとかなる」という自信をもたらしています。イギリス人は実利主義を誇りにしていて、最後はどうにか切り抜けられると思っているのです。

スコットランド独立の可能性に備えて、企業は緊急計画を練り始めました。「BREXIT」(British exit of the EU)の可能性にも備えていることは、疑いの余地がありません。スコットランドの首都エジンバラはロンドンに次ぐイギリス第2の金融ハブですが、ロイヤルバンク・オブ・スコットランドですら、スコットランドが独立を選ぶのであればイングランドへの本社移転を考えると表明しました。スコットランドのもうひとつの主要産業、石油業界も、民族主義の波で国有化が起こり得るという展望に戦々恐々としています。民族主義国家の進歩的な政策を支えるための法人税引き上げや信用低下の可能性は、どのセクターも恐れています。

日系企業(と他の外資系企業)がこの問題について立場を表明していないのは驚きではありません。意見を表明しても生産的なことは何もないからです。とはいえ、日系の銀行や建設・土木会社は、スコットランドと他のイギリス各地で社会基盤プロジェクトに投資してきました。スコットランド人の心が独立を選ぶとしても、如才ない合理主義で知られるスコットランド人の頭が最後は打ち勝ち、さらにイギリス人の実利主義がEUとの再交渉で頭角を現して、天変地異は回避できることを望んでいるはずです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2014年6月11日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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イギリスが「ノルウェーのように」なろうとすれば、日本企業が離れる恐れも

2016年、イギリスではEUを離脱するかどうかの国民投票が行われる可能性があります。在英日本商工会議所で講演したセンター・フォー・ヨーロピアン・リフォームのチャールズ・グラント氏の発言で、この国民投票の結果としてイギリスがEUを離脱すると予想しています。

イギリスのEU残留派は、EU離脱派ほど資金繰りが潤沢ではありません。また、あらゆる政治的説得力を駆使してくるEU懐疑派の政治家もたくさんいます。イギリスのメディアもほとんどは、EU離脱を支持する色眼鏡をかけた報道を繰り返しています。
EUがイギリスに残留すべきとする理論は、外国直接投資や経済への影響など、おおむね技術的な視点に立っています。一方、EU離脱派のキャンペーンは、国家としての独立を脅かすといった感情的なアピールをすることができます。

イギリスの実業界の人々は全般的にEU残留を支持していますが、情熱に欠けるという点では、私もグラント氏と同意見です。また、イギリスがEUを離脱した場合の成り行きついて、ある種の自己満足があるようにも見受けられます。イギリスの企業は、イギリスはノルウェーのようになることができると思っています。何らかの自由貿易圏に属しながら独立を保ち、国としては繁栄できるという考え方です。しかし現実には、ノルウェーは、傍から見るほどEUの政策と無縁ではありません。にもかかわらず、EUの政策策定のプロセスに対して影響力は持たないのです。

私の日本関係のビジネスという視点から言えば、「ノルウェーのように」というのは、イギリスに大変な悪影響を招くと思われます。過去10年間に、70社ほどの私のクライアントにもゆっくりと統廃合の流れが及んできました。そうしたなかイギリスは欧州本社をコーディネートする重要な役割を果たしていて、企業はEU加盟国の人材プールを大いに活用していますが、これはイギリスから、あるいはイギリスへの人の動きを容易にするEUの自由移動政策のおかげです。こうした人材は、日系企業の欧州本社の社員として、あるいはそれらに対して法務、財務、コンサルティングなどのサービスを提供する専門サポート会社の立場で働いています。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、ヨーロッパ全域における日系企業の雇用者数は43万7,000人です。群を抜いてその恩恵を受けているのがイギリスで、日系企業に雇われている人数は14万人。ドイツの5万9,000人と比べてもいかに多いかが分かります。

とはいえ、ドイツも日系多国籍企業にとって魅力的な土地です。特にエンジニアリング系の企業にはそれが当てはまります。イギリスが国境を閉ざし、EUへの影響力を放棄したならば、日系企業が欧州本社機能をミュンヘンかデュッセルドルフ又はアムステルダムに移し始めることは簡単に想像できます。

私が話した在英の日本人ビジネス関係者は皆、イギリスにEUに残留してほしいと思っています。しかし、内政干渉のように見られるという恐れから、その立場を声高に言うのは避けているようです。

EU残留のメリットを説得する責任は、私を含め、会社の事業がEU全体にわたっているイギリス人のビジネス関係者の肩にかかってくるでしょう。これは雇用だけでなく、グローバルな舞台におけるイギリスのイメージにもかかわることです。「リトル・イングランダー」風の孤立主義によって、そのイメージにどれだけダメージが及ぶかを考えなければなりません。グローバル経済で役割を果たし、影響力を及ぼし、イニシアチブを取って率いていくことに消極的と思われれば、グローバルな企業のほうからイギリスに留まることなど願い下げだと言ってくるでしょう。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2013年9月16日の日経ウイークリーに最初に掲載されました。

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