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先輩と後輩の絆が内部告発の有効性に影響

日本企業のコーポレート・ガバナンス、特に内部告発に影響する重大な要因として、先輩・後輩の力学があります。先輩・後輩関係は、特に終身雇用を保っている大企業で大きく作用します。

一般に日本の学生が大卒後すぐに国内大企業に就職すると、入社時点で即座に、自分よりも目上に当たる先輩ができます。先輩・後輩の関係は、とりわけ同じ場所から来た者、あるいは同じ場所に属する者の間で構築されます。

つまり、同じ大学の出身者や同じ部署に配属された社員同士が、先輩と後輩の関係を持つようになるのです。あるいは、部署が違っていても、共通の知人や親戚、または同じ出身地といったつながりで、先輩・後輩の関係ができることもあります。先輩はたいていの場合、メンターとなりますが、しかしそれ以上によくあるのが、部署や事業部門の派閥に先輩と後輩が一緒に所属するようになることです。

経営幹部レベルの指名は通常、派閥間の駆け引きや先輩からの後ろ盾に基づいて交渉されます。このため、強力な派閥の後ろ盾があれば、たとえどんなに不適材に見える人物でも、組織から単純に追放したり周辺へと追いやったりするのは非常に困難です。

忠誠と義務を伴う強い仲間意識が先輩と後輩をつなぎとめ、約30年にわたる雇用期間を通じてしっかりと固められていくのです。

ですから、会社の不正行為を告発するのはもとより、重大な過ちを指摘することすら、社員にとって難しいことは容易に理解できます。一般に日本や他のアジア文化では、自分のグループに所属する仲間に面目を失わなせるようなことはしません。先輩の顔を潰すなど、ほとんど考えられないのです。そのようなことが実際に起きるとすれば、先輩・後輩関係に取り返しのつかないダメージが及び、あらゆる感情の渦巻く状況が生じることは間違いありません。

このような世界にあって、経営コンサルティング会社や法律事務所、監査事務所など、外部からアドバイスを提供する専門サービス会社として立ち回るのは容易ではありません。職業人としての自分の行動規範に照らして明らかに修正の必要がある問題を診断したとしても、それを指摘すれば顧客から、社内の微妙な人間関係に波紋を投じることになると警告されるのです。

私が聞いたある若手監査人の話ですが、顧客企業で長年にわたる会計帳簿の虚偽計上が分かったため監査保証の署名を拒んだところ、あなたが署名しなければ会計監査を今まで担当してきた御社の先輩の顔を潰すことになると言われたそうです。それまでその監査法人の先輩たちは、会計報告の矛盾を承知のうえで物議をかもさず署名してきたのでした。

主義や原則に反することに立ち向かったり、正しいと信じることを貫いたりすることは、きわめて勇気のいる行動です。自分を支えてくれている人たちを傷付けると知りながらそれをするのは、愚行以外の何ものでもないと言う人もいるでしょう。

2011年10月31日 パニラ・ラドリン著 Nikkei Weekly

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オリンパス事件が示したガバナンスの新たな教訓

オリンパスの粉飾決算事件の初公判が開かれ、菊川剛元社長が損失隠しの起訴内容を認めました。また、ソニーがオリンパス株式の約11%を取得することに合意し、オリンパスの未来は確保されました。これをもって、会社が崩壊して多数の社員が路頭に迷うという、菊川氏本人が恐れた最悪の事態は回避されながらも、正義が下されつつあるように見受けられます。

オリンパスのマイケル・ウッドフォード前社長が回顧録として記した事件の全容を読むにつけ、私は、何か別の問題解決方法がなかったものかと考えずにはいられません。本に綴られたなかでも決定的な瞬間は、ウッドフォード氏の支持者であった菊川氏が、粉飾の責任を受け入れて辞職するよう事実上迫られていることに気付き、「マイケル、私のことが憎いか?」と尋ねた瞬間です。

ウッドフォード氏にとって、この問いは、理解を超えるものでした。菊川氏に対する追及は個人的なものではなく、役員として当然の務めと考えていたからです。起きた出来事を透明にし、罪を犯した者の責任を問うことは、立場を任された者の任務の一部でしかなかったのです。

けれども、菊川氏にとっては、粉飾が会社を救うための窮余の策であり、そこに私利私欲が介在していなかったことは、私にも想像がつきます。菊川氏には、会社の運命に対する役員としての務めと従業員に対する責任を、自分自身の運命と切り離すことができなかったのです。このため、自分の行動に対する攻撃は自分という人間に対する攻撃であって、しかも会社が存続できるかどうかなど気にかけていないかのように見える相手からの攻撃であると思えたのでした。

この点について、ウッドフォード氏は、オリンパスの存続を誠心誠意、気にかけていることを何よりも明らかにしています。ただし、告発、処罰、贖罪という過程こそが、会社の再生を可能にすると信じていました。アングロサクソン文化圏の資本主義世界で生まれ育った多くのエグゼクティブは、これに似たマインドセットを持っています。すなわち、自分が経営する会社から自分自身を切り離し、客観的に眺めることができるのです。

しかし、これには短所もあります。他人の築いてきた会社に乗り込んで、大胆な再編を行い、過去につながっている一部の人々を掃討して、自分の「てか」(ほぼ必ずと言っていいほど男性)を地位に就けることで、必要な結果を出そうとする傾向があることです。数字さえ良ければ株主は幸せで、犠牲者は落伍するけれども、どこかまた別の会社で新たなスタートを切れる、という考え方をしがちなのです。

これは、日本での現実とは異なります。そして、オリンパス事件を単なるコーポレート・ガバナンスの問題ケースとして片付けているだけでは、日本にもコーポレート・ガバナンスの基準があり、それを実践することが可能かつ義務であるという事実を見落としています。しかも、日本の企業環境は、欧米のそれと同じぐらい複雑化しています。残業や多様性についての法規はもちろん、外国人エグゼクティブが無視しては落とし穴にはまり込む「パワー・ハラスメント」を統制する規則も存在しています。

外国人エグゼクティブが日本で挫折した事例はあまりにも多く散在しています。これを見れば、日本企業はもはや、単に外国人エグゼクティブを指名すれば何やら魔法のように事業がグローバル化すると願うわけにはいかないでしょう。外国人エグゼクティブには、強力なサポートと指導が必要です。日本の役員会の仕組みについてのトレーニングから、日本人従業員の管理経験がある先輩によるコーチングまで、彼らが崩壊を巻き起こさずに好ましい変化をもたらせるようになるための手段が講じられなければなりません。

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真のグローバル化を目指す日本企業にはフレキシブルな勤務形態が必要

2011年の東日本大震災の後、節電方法としてクリエイティブな提案が多数出されました。金曜日を休みにして土曜日に働くといったアイデアもありました。こうしたアイデアについての記事を読むにつけ、私は、フレキシブルな勤務形態がようやく日本でも普及するのではないかと希望を高めました。フレキシブルな勤務形態は、女性の再雇用を促す方策として長らく議論されてきましたが、必ずしも普及したとは言えません。職場のダイバーシティを高めるための儀礼的な取り組みとして女性だけを対象に導入するのではなく、重要な社会のニーズを感じてこの種の制度を実践的に運用する日本企業がクリティカルマスに達しないかぎり、社会に広く浸透した働き方になることは決してないと、私は常日頃思ってきました。

自宅勤務ができれば、電力不足の状況にとって明らかにプラスの効果をもたらします。エネルギーを大量に消費する交通機関への負担が減るためです。また、災害に強い社会を作ることにもつながります。仮に日本がまたも大きな震災に見舞われたならば、社員が各所に分散していることで、1カ所のオフィスビルに全員が集まっているという弱さを緩和できます。

長期的に社会にもたらされる恩恵は、女性の職場復帰を促すという明らかなメリット以外にもあります。同僚や会社に気を遣って長時間オフィスに居残ることを良しとする「プレゼンティーイズム」を規範とする状況が、ついに解消されるかもしれません。日本企業にとって、プレゼンティーイズムの自然消滅を受け入れるのは困難です。残業の背後にある基本的な姿勢として、集団志向があるためです。その結果、自分のその日の仕事をすべて終えるということが、決してできません。チームの誰かを手伝うことは常にできるからです。

過去10年ほどの間にイギリスの職場で起こった大きな変化のひとつは、私が「グレーゾーン」と呼んでいる働き方です。スマートフォンのおかげで、朝晩の通勤途中に仕事のメールをチェックできるようになりました。また、小型軽量のノートパソコンや会社のサーバーにリモートからログインできる機能によって、仕事を家に持ち帰るのも簡単になりました。日本企業は、こうした働き方がもたらすセキュリティのリスクを案じています。とはいえ、データを1カ所のハードウェアにまとめておくことにもセキュリティのリスクがあることは認識されるようになっています。

イギリスでフレキシブルな勤務形態が重用されるようになった背景には、タイムゾーンという点で理想的なロケーションにあることが影響しています。朝のうちにアジアから業務を引き継ぎ、午後には北米の同僚にバトンタッチすることができます。朝早くや夜遅くの電話も、自宅からかけられるのであれば、それほど耐え難いものではなくなります。とはいえ、同僚との交流や情報共有という点でバランスを取らなければならないことも認識されています。月曜から金曜までずっと自宅勤務をすれば、業務の効果的な遂行には役立ちません。日本には、北米からアジア経由でヨーロッパへと業務をつなぐ際の溝を埋める橋渡し役になってほしいと思います。ただし、それにはフレキシブルな勤務時間を認める必要があるでしょう。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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ビデオ会議は日本の本社とのコミュニケーション不足を解決するソリューションか

最近になってビデオ会議に出席することが増え、その有用性に対する私の見方はポジティブな方向へと変わってきました。これには近年の技術改良が大きく影響しています。とはいえ、日本とのコミュニケーションにかけては、ビデオ会議がフェイス・トゥ・フェイスのミーティングに代わるまでには至っていません。

日本のように「高コンテクスト」な文化の出身者を相手にした遠隔コミュニケーションの問題点は、これまでにもよく指摘されてきました。このような文化の出身者は、ボディランゲージや沈黙、声のトーンなど、言葉ではない表現に頼ったコミュニケーションを好みます。一方、「低コンテクスト」の文化(米国、ドイツ、オーストラリアなど)の出身者は、明示的な言葉によるコミュニケーションを好みます。

であれば、高コンテクストな文化の相手と話す時こそ、フェイス・トゥ・フェイスの次に良いのがビデオ会議だと思えるかもしれません。実際、メールや電話より良いことは間違いありません。しかし、私のこれまでの印象では、効果はあるものの、定期的かつフォーマルな全体会議のようなミーティングに限られると言えそうです。

そのような状況ですら、問題点がいくつかあります。まず第一に、ネイティブの英語話者は、自分たちの話し方が相手にとって分かりにくいことを理解していません。カジュアルな会話のように、ウィットを効かせながら、時には文章が完結せずに終わったりする話し方です。このような話し方を続ければ、日本人側は「引いて」しまい、会議でよく見せがちな典型的な行動をすべて示すようになります。目を閉じたり、眉をしかめたり、あるいは互いにヒソヒソ話して理解や意図を確認する行動です。

この問題を解決するには、「インターナショナル」な英語を話すことです。短くて分かりやすい文章にして、説明を十分に加え、相手の理解を確認する質問を差し挟みながら、トピックのリストやスライドなど目で見られる資料を使って話を進めることです。

それでも、会議というものに対する期待の違いが、ビデオ会議の成果に影響することがあります。日本では、意思決定は公式な会議以外の場で下されます。提案をしたいと思っている人が、事前にすべての関係者に非公式に話をしておき、場合によっては企画提案書も共有して、関係各位から承認を取り付けます。そのうえで会議が招集されるため、会議は「ハンコを押すだけ」の場となり、確認報告や実施計画の策定が目的になります。しかし、欧米の文化では、会議とは、ブレーンストーミングをして意見の違いを収拾する場と見られています。

さらに、ビデオ会議では達成できない重要なコミュニケーションの側面があります。それが「インフォーマルな接触」です。日本では、交渉や信頼関係の構築といった作業の大半がフォーマルな会議以外の場、すなわち居酒屋、カラオケバー、レストランなどで行われます。これが悪名高き「本音と建前」の問題です。全体会議で発言されるオフィシャルな意見はありますが、本当のところを知るには、オフィスを出て1対1か数人のグループで話し合う必要があるのです。

フェイス・トゥ・フェイスのミーティングは、バーチャルなチームビルディングの初期の段階はもちろん、その後も時々は必要です。私自身も、過去何年もの間に幾度となく日本の仕事仲間とビールを共にし、信頼を構築してきましたが、電話で1対1で日本語で話しても本音を聞けないことが時々あります。この理由はそう難しくはありません。日本では社員が机を並べて座っているため、電話の声が周囲に聞こえてしまうのです。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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カストマー・サービス(その6) 多様性とカストマー・サービス

前号では、英国と日本のカスタマーサービスの水準の違いについて話をしました。その中で根本的な文化の違いから、英国のカスタマーサービスに日本の水準を期待するのは無理であろうという結論に達しました。その理由は日本人は一般的に、周囲の目にとても敏感であるからです。

何故日本人は英国、また他国の人々と比べて他人を思いやることに心を注ぐのでしょう?多くの比較文化評論家が日本の歴史について語る時、日本は協調的な‘村’を基本とした稲作国家であるとする一方、西洋社会は個人主義的で、その日その日の収穫を追う狩猟集団と考えます。ただ、この考え方は西洋でも共同作業による農作があるという事実に背を向けているだけでなく、文化は工業化や都市化と共に変動するという事実も否定しているのです。

国家の歴史的背景はさておき、思いやりの度合いというのは、いかにその社会が多様的で、変動的であるかに帰するでしょう。礼儀正しさとか思いやりという点では、私が住んだ事のある英国の他エリアと比べ、ロンドンは著しく乏しいといえます。ロンドン住民の40%は英国以外で生まれています。それ以外の生粋の英国人でさえも仕事や教育、家庭の事情などでロンドンを出たり入ったりの状態ですから、今後二度と会うことも無いであろう周囲に対して思いやりを持つ動機付けも無いのでしょう。また、これだけ人種のるつぼとなれば、礼儀正しさそのものへの概念も国籍の数だけあると理解できます。
日本人は多様的な先祖を持つ国民ですが、それは何千年も昔の事であって、それ以降は日本への移民の流入はあまりありません。日本国内では、地域によって文化・振る舞い・作法等に顕著な差はありますが、礼儀や正しい行いについてはとても厳しい水準を全国で持っているようです。

礼儀正しさが多様な形で共存しているロンドンのような社会では、文化の衝突が生じ易くなります。丁寧に接しているつもりが、相手には無礼に感じられたりということもあります。こんな例えがあります。あるアフリカの文化では、目上の人と話す時に直接目を見るのは無礼とされています。そんな訳で、アフロカリブ系イギリス人の若者と白人の警察官とでひと悶着が起こったりして、「おい、ちゃんと俺の目を見て話を聞け!」などとなるのですね。

私は学生時代にロンドンで、中華レストランで夏のアルバイトをした事があります。私はウエトレスとしてはかなり役立たずでした。北京ダックの肉を切って給仕するという長けた技の必要な事は、全て中国人のウエトレスに任せきりでした。ところが中国流のいいサービスとは、てきぱきと動き、感情を顔に出さず、お客様と世間話などしない、という事でした。つまりそのイスラエル人のオーナーは私とイラン人の女性を雇うことで、笑顔で四方山話をしながら飲み物を給仕するように企んだようです。お客様への笑顔さえあれば、私たちのウエトレスとしての技量は問題でなかったようです。とは言え、氷入りのコカコーラを載せたトレーを男性のお客様の膝に落っことしてしまった時には、笑顔作戦でもさすがに対処は難しかったのですが!

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思いやりとカスタマー・サービス

カスタマーケアを題材としたシリーズの前号で、英国のサービス産業で働く社員のお客様に対する不躾、不快な対応は、社員による仕事自体そして会社に対する誇りの欠如から来ると説明をしました。会社は社員をいいように利用し、株主だけに注意を向け、社会に対してはそっぽを向くし、大体において人々に仕えるような仕事は品位に欠けるという心理がその根底にあるのです。

このような心理は、社員が雇用主に対して前向きな気持ちを持つよう、会社として努力をする事で、多少の改善は図れるのではないかと思います。ご存知のように顧客対応が優秀とされる英国の会社の例では、John Lewisを挙げる事が出来ます。社員は会社のパートナーであり、そして株主でもあるのです。また、日本のように現場で働く人に権限を与える「現場主義」や、職人としてのみでなく、サービス一般の誇り高い「物づくり」の考え方も役立つのではないかと思います。
今回、年末・年始の時期に日本と英国内を行き来しましたが、英国のサービスレベルが果たして日本のレベルにまで到達し得るのかと、疑問に思いました。埋めるには余りにも難しい根本的な文化の違いがあるのです。例えば、日本社会では自分の発言が他の人にどう受け止められるか、などという他人の気持ちを優先する部分が、英国のそれとは比較にならない度合いで浸透しているのです。

ある英国人記者が、「監視カメラの国―日本」と称したことがあるように、日本では他人の目や反応を気にするばかりに、圧迫感となることさえあるのです。とは言え、これは英語で言うところの ‘forethought’や ‘consideration’、つまり「思いやり」という言葉と表裏一体なのです。他の人が何を必要としてるのか、または何を感じているのかを察し、求められる前に手を差し伸べる能力と言えるのではないでしょうか。

この“思いやり”のコンセプトを私がある英国人のマネジャーに説明した時、彼は面白い話をしてくれました。彼がヒースロー空港で日本人の同僚を出迎えて、会社の工場に案内して欲しいと頼まれた時の事です。この英国人マネジャーは多忙なスケジュールを縫って出迎えたので、空港から目的地の工場まで一刻も早く到着するよう、急いで運転をしていました。道中で例の日本人同僚が、あなたの好きなジュースは何かとか、ダイエットセブンアップの方がダイエットスプライトよりもいいのではないかとか、唐突に聞いてきたというのです。それを聞いて私がこの英国人マネジャーに’思いやり‘について説明をすると、そうか、彼は喉が渇いたと仄めかしていたのかと、はたと気付いたようです。

「では、もし次にこのようなことがあったら、どう‘思いやり‘を示すべきでしょうか。どこかで飲み物でも取りながら一休みしませんか、と聞いた方がいいんでしょうね。」このマネジャーが質問してきました。もし日本人同僚も同じように思いやりの気持ちを持っていたら、あなたの多忙ぶりを考慮して、そうしましょうとは言わないでしょう。とアドバイスしました。この状況での最善策は、予め飲み物を用意しておき、車中で勧めることでしょう。これこそが究極のカスタマーサービスなのです!

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日本のカスタマーサービスは物づくりに繋がっている

前項で、日本のカスタマーサービスは物づくりに繋がっているのではと申し上げました。通常、物づくりという言葉はサービス産業でなく製造業で使われる言葉で、社会的にもとても重要な概念なので、どうして物作りがカスタマーサービスなの?とお思いの方もおられると思います。ここでこの言葉の意味するのは熟練技能であり、これは手作業を通して名工たることへの誇りを意味します。

幼少期に私は仙台に住んでいたのですが、ある時私達の住む一風変わった異人館を、大工さん達が修理していたことがあります。ある日私が学校から帰ると、休憩時間にその大工さん達は私が収集していた切手で折り紙の鶴を折っていたのです。私は大事な切手収集をだめにされてぶすっとしてしまったのですが、私の両親は大工さんのごつごつした手がこれほど繊細で器用に折り紙を折ることが出来るのを見て驚嘆していました。

私は折り紙を日本の幼稚園で習ったのですが、うまく折れたことが一回もありませんでした。上手に折ろうと思う半面、正確無比に紙を折る我慢強さが足りなかったのだと思います。そのせいか、私は日本のデパートで買い物をする度に、その品々を上手に包装する販売員の器用さには感動しない訳にはいきません。クリスマスプレゼントの包装が苦手な私にとっては、特にこの時季になるとそれを思い出します。

私は幼少期に日本舞踊も習いました。折り紙も勿論の事、茶道や剣道のように日本で広く伝授されている芸事の真髄には、体の動きだけでなく、対象となる物をいかに扱うかが重要視されます。例えば、着物をきれいにたたむとか、また扇子を美しく開く、という事が、実は日本でのカスタマーサービスが品よくきちんとに提供されている背景にあるのだと思います。

このような技術は英国の学校では通常教わりません。その為、英国では贈り物を包装するというサービスは提供されませんし、もしされたとしても、何ともお粗末なものです。実際、包装については通常英国では特別に頼まないとなりませんし、しかも料金がかかります。最近私が訪れた店で、唯一贈り物の包装が無料で、しかも綺麗に仕上げてくれるお店が、ロンドンのJermyn 通りにあるFlorisでした。ここは家族経営で、伝統的な製法の香水を売っています。一見したところ販売員は家族の一員ではないのですが、誇りを持ってとてもいい対応をしてくれたばかりでなく、充分な商品知識を持ち合わせていました。

深い商品知識とそこから生まれる誇り、という点では、もう一つのチェーン店が思い浮かびます。このお店は常にいいサービスを提供するという事で話題の、Majesticというワイン専門販売店です。Majesticはカスタマーサービスが会社のブランドであるとして、そこに大きな力点を置いています。そのため、社員のトレーニングにたくさんの力を注ぐのですが、恐らくこれがMajesticのワイン愛好者を惹きつける理由なのだと思います。そして更には彼らの深い商品知識と誇りあるサービスがお客様に大きな満足をもたらしているのではないでしょうか。

物づくりには双方向性が大切です。提供する側・される側とも、物づくりの宿す技能と知識を深く認識する必要があります。英国の消費者は日本のように、物づくりへの深い認識を養われていない為、サービスを提供する側も自分達の対応に誇りを持てないという結論に至るのだと思います。
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カスタマー・サービス(その3)

前項でどのように消費者がサービス産業の社員から扱われるかを見てみました。サービス産業では150年に渡る階級社会の中で醸造され鬱積した憤り、熟練労働者の誇りの喪失感を持つ背景を抱えた社員の働いていることに言及しました。
大体においてサービス産業は、社員の福利厚生、お客様そして社会的責任に関心が薄いのです。このようなサービス産業で働く社員にお客様第一のカスタマーサービス精神を持って意欲的に働いてもらうことの難しさは火を見るよりも明らかです。英国の消費者は、この様な背景に根ざす問題点を持つサービス産業からカースタマーサービスを受けているのです。

勿論、全てがそうではなく例外もあります。例えば最もよく知られた例としては英国のJohn Lewis Partnership で、これはJohn Lewisデパートと Waitrose スーパーマーケットのチェーンを包括しています。この会社の構成はパートナーシップで、社名の示すとおり、6万9千人の社員は社員でありながら会社の所有者でもあります。被雇用者でも、スタッフでもなく、“パートナー”なのです。この会社の創立者 John Spedan Lewisの考える会社のあるべき姿は究極の目的としてパートナーとしての幸福を社員全員で共有するとしています。例えば、ボーナスとして会社の利益を受け取る割合は、2007年は、役職に関わらずサラリーの18%でした。そして13名の取締役のうち、5名はスタッフによって選任されています。

こういった会社としての構造が、高いカスタマーサービスの水準を支え、そして更には現在のような不況さえも切り抜けるに至っているのではないかと思います。パートナーは顧客に奉仕することで自分の品位が冒されるとは感じず、むしろビジネスに誇りを持ちながら、お客様と対等の立場として業務を遂行しています。

サービス産業で働く人たちの劣等感が、これまでこの国においてカスタマーサービスそのものを毒することとなっていました。もし顧客が奉仕する側に優越感を抱かず接すれば、必ずしもぴか一でないにせよ、しっかりとした親しみのあるサービスを受ける事は可能なのです。
最近ある会合で英国在住の日本人のグループと英国のカスタマーサービスについて話し合ったことがあります。その時、日本と英国の両国でレストランのフロアスタッフまたは販売員をしたことがある一番若い参加者が、英国のカスタマーサービス文化についてとても好意的に感じると言っていました。英国のお客様の接し方が日本にいた時と比べると数段感じがいいと話をしてくれました。

一方日本では、力関係と社会的な地位の違いを受忍するという、長い儒教の精神の影響があります。これは社会的地位の低い人が人間として価値がないとか、軽蔑に値するとかいう事ではありません。地位の低い人は親しみがあるまたは対等な扱いを必ずしもを受けないのですが、しかしそれは社会的通年として受け入れられているのです。儒教は正しいやり方とか礼儀作法をきちんと守ることに重点を置いているので、目に見える形でカスタマーサービスに有効な意味を提供することとなります。礼儀作法を重要視することは、カスタマーサービスの‘ものづくり’的精神に繋がってきます。ここが英国では欠けていることなのですが、次回にこの部分を検証してみたいと思います。
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カストマー・サーブス(その2)

前回の記事で、日英のカスタマーサービスに差があるのは多くの理由が背景にあることに触れました。そしてこれらの理由から日英の企業文化の違いの成り立ちに辿りつき明らかにすることが出来るのかも知れません。

ここで、私がまず最初に検証したいのは、企業理念と日英の会社の歴史的背景の違いです。ご存知の通り、人類最初の産業革命は英国で興りましたが、必ずしも最初が最良と同義語ではありません。これはロンドンの地下鉄が一つの例と言えるかもしれませんね。実際、私達が多くの失敗を重ねる事で、他の人が何かを学ぶことができます。

英国の産業革命の副産物として生まれた社会問題に対する意識は、未だに英国国民の心に影を落としています。例えば英国人は会社の経営者と聞けば、腹黒い金持ちの資本主義者をイメージするのです。のどかな田園風景を黒々とした不吉な工場に塗り替え(有名な英国の賛美歌エルサレムからの抜粋)、職場環境や健康には目もくれず、労働者を家畜のごとく酷使する悪代官として捉えてしまいます。

日本で後に始まった産業革命でも社会問題は起こったものの、日本は国家の近代化と、産業力・軍事力において西洋諸国にひけを取らない実力をつける為に精一杯でした。19世紀の終盤に成熟した日本の会社の企業理念は、企業は富国の為にあるという概念のもとにあり、これは20世紀初頭に設立され、社是7条の中に“工業を通じて国家に奉仕“を掲げる松下電器のような企業にも引き継がれていきました。そして第2次大戦後、日本は国を挙げて働きつめ、再び一流工業国に復興させ、”奇跡の日本経済発展“を遂げました。やはりその頃に設された企業、例えばホンダ技研などは、「社員の幸せと社会貢献」を強く謳っています。

それに対し、英国の産業革命以降の製造企業と社是を見てみると、往々にして社会貢献とか、社員の幸せという言葉は見当たりません。といっても、ごく最近は企業の社会貢献がファッショナブルな傾向になってきていますが。1970-1980年代に多くの伝統産業が打撃を受け、これまで自分達に良くしてくれていた会社が大幅な人員削減を決行していく中、人々の会社への信頼感と、労働階級としての誇りは消え失せてしまいました。炭鉱、鉄鋼、エンジニアリングといった産業で失職した人々は、俗語でMc Jobsと言われた、不安定なサービス業へと移行せざるを得なかったのです。

アングロサクソン資本主義における企業は、利益率や投下資本の株主へのリターンが目的の、株主中心主義と捉えられています。これに対し日本の会社は会社を支える基本要素は利害関係がまずは社員であり、次にお客様であり、社会であり、そして最後に株主であり、英国の会社は日本のステークホルダー型企業の在り方とその様相を異にしているのです。英国の顧客サービス担当者は、過去150年の階級社会で培養された恨みとか憤り、単純労働者の誇りの喪失感と、自分の雇用主は自分や顧客や社会の事なんか、本当はこれっぽちも考えてくれていないんだ、という混ざり合った思いで対応している訳です。とは言え、勿論全てがこのようなわけではありません。次回はまた違うケースを明らかにしてみたいと思います。

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三つの文化を持つ子供

私が6歳の時に両親と一緒に日本に移住しましたが、このことがその後の私の人生に与えた影響の大きさを、両親は当時十分には理解していなかったと思いま す。異文化コンサルタントとして活動する今、日本での子供時代の」経験の大切さをあらためて感じています。専門家の世界で色々な議論がある中、多くの心理 学者や文化人類学者は、人間の人格形成期といわれる年齢層は5-6歳くらいから11-12歳くらいの時期とみています。つまり、この期間に人間性とか、文 化的理解が形づくられるとのことです。

実際、私が仙台と神戸で生活をしたのは、まさにこの時期でした。1970年代の仙台には宣教師や私の家族のような学者しか外国人としておらず、こ の時期の私の経験はまさに強烈そのものだったのです。インターナショナルスクールもなく、白百合小学校初の、セーラー服の金髪少女であった訳です。

通学を始めた数週間は涙ながらの日々でした。休み時間といえば学校中の子供たちが物珍しげに寄って来て、私の髪に触ってみたり、青い目を覗き込ん でみたりするのです。下校時間に私の父母が迎えにきたりする時は、いつも大騒ぎでした。とは言え、その年頃の子供はすぐに環境に順応し、スポンジのように 物事を吸収する上、すぐにまた目新しいことに心を移します。半年も過ぎる頃になると、私の日本語もかなり上達し、ちょっと変わった見かけだけど、私達と同 じよね、と受け入れてくれる友達も出来る様になりました。ある時などは作文で、一等賞をもらったことさえあるくらいで、その時は両親が私の涙の日々からの 成長・順応ぶりに、声を上げて大喜びしたものでした。(はじめの頃の私の苦労や辛い思いを見ていたので、私の成長ぶりに胸が一杯になるくらい嬉しかったの だと思います。)

その後移り住んだ神戸の生活は仙台に比べとても順調でした。国際港都市ゆえインターナショナルスクールもあり、私のように色々な国籍や文化を持つ 子供が沢山いました。ちなみに、後で知った事なのですが、わたしの様な背景を持つ子供はTCKと呼ばれるそうです。これは即ちThird Culture Kidsということだそうで、自分の祖国以外で育ち、それ故に祖国とも、育った国とも故郷としての強い絆を感じない感覚を持つのです。その代わりに彼らに 特有の『第3の文化』なるものを作り上げるのです。そして価値観を共有する他のTCK達と交流しながら、生まれた国と育った国の両方の良いところを取り入 れていきます。また、このTCK達はひと所に腰を落ち着けるよりも、数年毎にそわそわしはじめ何処か他のところに移住したがる傾向があるようです。そうし てやがて落ち着くところが、TCK達のコミュニティーである、ロンドンやブルッセル、スイスなどの国際都市となるのです。

読者の中には、ひょっとしてご自身もTCKでは?と思われる方もおられるでしょう。または、TCKなるお子さんをお持ちの親御さんであれば、ご自 身の選択が、多大な影響をお子さんの将来にもたらしてしまったかと心配されるかもしれません。でも総合的に考えると、私は自分の息子がTCKになることを むしろ望んでいるのです。と言っても、我が息子はこの英国で典型的な英国人に育っていますけれど。

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