カテゴリー: 人事

  • グローバル志向の人材を引き付けるには、働きたい会社としてのブランドが必要

    グローバル志向の人材を引き付けるには、働きたい会社としてのブランドが必要

    去年、ロンドンで開かれる日本人マネージャーの会合で、「日本は好きでも、日本企業では働きたくない」というトピックの講演をしました。このタイトルは、大学で日本語を勉強したり、JETプログラムで数年間にわたって日本で働いたりしたとがあるヨーロッパの若い人たち、あるいは単にアニメやゲームで日本文化のファンになった人たちの感想を集約したものです。

    彼らが日系企業で働きたがらない理由は、やりがいのある楽しいキャリアにはなりそうにないと思っているからです。残業が多く、官僚主義で、堅苦しい年功序列があることを案じています。しかも、ヨーロッパの日系企業はほとんどが、面白みに欠けるエンジニアリング業界の販社だと思っています。

    そこで私は、「働きたい会社」としてのブランドを強化して若い人たちにアピールすることを、先の会合で提言しました。ヨーロッパの人でも、日系企業での社歴が長い社員の多くは、日系企業で働くのが好きだと言っています。理由を聞くと、違っている、変わっている、興味深い、長期志向で人間味があるなどの答えが返ってきます。欧米系の多国籍企業は、様々な側面が標準化されていて、結果重視で短期志向ですから、それとは異なります。また、日系企業は、現地採用社員の短期的な日本派遣も考えるべきでしょう。日本人以外の新卒採用者が社内人脈を開拓して、意思決定に参加し、キャリアを開発できるようにするためです。

    とはいえ、海外の現地採用活動のためだけにブランドを強化するよう、ヨーロッパの駐在員が日本の本社にリクエストするというのは難しいことも分かります。おそらく日本の本社は、グローバル志向の日本人新卒者を雇うのが優先課題だと考えていることでしょう。

    今回の講演では、外国と日本の大学を卒業予定の日本人学生を対象とした「キャリタス就活2020」の調査結果も紹介しました。それによると、外国の大学に通う日本人の学生は、ヨーロッパの学生と似たニーズを抱えています。日本の大学生は、安定性を重視していて、海外よりも日本で働き、同じ会社で長く働きたいと考えていますが、外国の大学で学ぶ日本人は、良い報酬をもらいながら自分の夢を実現し、日本よりも海外で働くことを希望しています。

    働きたい会社としてのブランドを強化し、魅力的なキャリアパスを用意することに加えて、私がもうひとつ提案したのが、ヨーロッパの社員を管理する日本人駐在員を対象に、リーダーシップ、フィードバック提供、ダイバーシティとインクルージョンについてのトレーニングを提供することでした。

    もちろん、これは私のビジネスにつながることを期待しての提案でしたが、講演後にある日本人マネージャーと話して、それ以外にも理由があるかもしれないことが分かりました。その人は取締役で、社員の80%は日本人だけれども、若手社員と年配社員の間、および外国の大学を卒業して外国に住んできた社員と日本で大学に行き主に日本で働いてきた社員の間に大きなコミュニケーションギャップがあると言いました。明らかに日本企業は、日本人社員の間でも異なるマインドセットに対応しなければならないということのようです。

    このトピックに関するPernille Rudlinのプレゼンテーションのビデオは、Rudlin ConsultingのYouTubeチャンネルで覧いただけます。
     

    Pernille Rudlinによるこの記事は、2019710日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

    パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindleペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

     

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  • 「日本は好きでも、日本企業では働きたくない」

    「日本は好きでも、日本企業では働きたくない」

    今月イギリスで開かれる日系企業の人事担当者向けのイベントで、「日本は好きでも、日本企業では働きたくない」と題したプレゼンをする予定です。日本は、ヨーロッパの若い層の間で今までにも増して人気の国になっています。アニメと漫画、それに日本食の人気があるためです。しかし、ジェトロの調査によると、在ヨーロッパの日系企業にとって人材確保は重要な経営課題であり続けています。

    若い人たちは、遊び心のある日本のポップカルチャーは大好きですが、技術・製造畑の日系企業でそのような文化を経験できるわけではないと考えています。

    日系企業で働きたい人が増えない背景には、もう少し深刻な理由もあり、それは現地採用者にとってキャリア開発の機会がないことです。経営幹部になれるのは日本人だけのように見えるからです。大手の日系企業はこの現状を改善すべく、グローバルな採用・研修制度を導入して、日本以外で採用した社員を日本に赴任させることも行っています。

    私が思うに、人材確保の困難はおそらく中小の日系企業でむしろ顕著でしょう。これらの企業では、ヨーロッパ事業は依然として基本的に販売拠点と位置付けているため、有能なエンジニアを雇っても、開発よりは営業が主な仕事になり、失望させてしまう可能性が多々あります。

    西欧の日系企業は、管理職者を最も必要としていますが、以前から人件費の問題を抱えています。一方、中欧と東欧の日系企業が最も必要としているのは工場の従業員ですが、これら地域でも人件費が急速に上昇していて、最大の経営課題になっています。知名度に勝る欧米企業と競争しなければならないと思われますが。欧米企業も労働力不足の問題を抱えています。言わずと知れたソリューションは高報酬を出すことですが、そうすれば中欧・東欧で製造するコストメリットに食い込みます。

    そこで日系企業は、管理系や技術系の人材をめぐる価格競争に参戦するよりは、何か別の魅力を提供する必要があります。これが、ヨーロッパの若者の間で人気の日本のポップカルチャーへと結び付くわけです。

    最近、ある技術系の日系企業で15年以上の勤続経験を持つヨーロッパ出身者が私のセミナーに参加して、「エキセントリックな子供っぽいマインドセット」が日系企業で働くメリットのひとつだと指摘しました。17歳の私の息子も、初めての日本訪問で同じことを発見し、このカルチャーに飛び付きました。ポケモンのポッチャマのぬいぐるみと柴犬のペンケースを手に入れて、ペンケースは今では哲学、数学、経済の教科書に混ざって燦然と輝いています。

    ジェトロの調査では、製品やサービスをヨーロッパで販売するうえでの最大の課題に「ブランド強化」が選ばれましたが、これは広告宣伝などよりもむしろ、若い層にアピールする「働きたい会社」としてのブランドであるべきです。雇用主としてのブランド認知が広まれば、その会社のものづくりに参加し、販売や経営管理で役に立ち、同時にそれを楽しむ様子を、ヨーロッパの若者が思い描けるようになるでしょう。

    このトピックに関するPernille Rudlinのプレゼンテーションのビデオは、Rudlin ConsultingのYouTubeチャンネルで、日本語でご覧いただけます。

     

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  • 職業人としての説明責任

    職業人としての説明責任

    日本企業で行われる無意味な会議の話がトレーニングのワークショップ中に出ると、私はよく自分の経験をシェアしています。日本企業で働いていた時に、経営企画チームを代表して本社での会議に出席しなければなりませんでした。私にはまったく知識のないトピックの会議でした。ただ稟議書を読んで、いっさい発言せず、最後に「了解」とだけ言うよう指示されて会議に臨みました。会議では、赤字工場の開設に携わった2人が、稟議書に書いてあることを一字一句たがわず読み上げ、続いて数億円の損失処理の承認を求めました。明らかに承認済みの話でしたので、出席者は全員「はい、承認します」と言いました。この会議に何の意味があったのか、いまだに分かりません。ある種の罰ゲームだったのかもしれません。人生の貴重な2時間を無駄にしました。

    日本企業には説明責任を社内的に示す同様のメカニズムが存在します

    でも、考えてみれば、この会議の目的は、社内の説明責任を確立すること、いわば「筋を通す」ことにあったのでしょう。意思決定が下され、行動が取られ、その理由が説明されたという事実形成です。ほとんどの日本企業には、説明責任を社内的に示す同様のメカニズムが存在します。また、問題が生じた際、経営幹部は社外的にも説明責任を負うとされ、ゆえによく見かける謝罪の儀式が行われるのです。

    けれども、ここしばらく相次いだ日本企業のスキャンダルには欠けている要素がひとつあり、これは欧米のメディアやエンターテインメント業界のセクハラ事例にも共通しています。それが、職業人としての説明責任です。日本企業がグローバル化して社員も多様化するにつれ、この要素をコーポレート・ガバナンスやコンプライアンスのシステムに取り入れなければならなくなるでしょう。

    欧米社会の幅広い職業、例えば弁護士、医師、会計士といった伝統的な職業から、最近では人事、金融、エンジニアリングなどの職業まで、あらゆる分野でその専門職者になろうとするのであれば所属が前提となる職業者の協会というのが存在します。加入に際してその倫理規定に従うことを宣誓し、試験を受けて進級したり毎年一定時間の研修を受けたりすることが期待されています。

    説明責任は多様性のある労働力を構築するのに役立つ

    国境を越えて専門職の資格を相互に認定するプロセスは複雑ですが、とはいえ専門職の資格を有する社員を雇うようにすれば、多様性のある労働力を構築するのに役立つでしょう。専門職の資格というのは、性別、年齢、障害、人種といった属性に左右されないためです。

    また、日本企業にとっては、専門職者を雇うことにより、海外事業の説明責任を社内的にも社外的にも確立しやすくなるはすです。職業人としての説明責任を有している社員は、倫理規定に従わなければ、その職業を営む資格を失います。このため、上司や顧客から非倫理的なプレッシャーがかかる状況でも、それに抵抗する強さができます。

    ただし、説明責任とは双方向のプロセスです。社員が社内だけでなく職業者の協会に対しても説明責任を負う一方で、管理職者は今までどおり部下の行動に関して社内的にも社外的にも説明責任を負います。つまり、管理職者は、信頼を育み、達成可能な目標と十分なリソースを提供しなければなりません。

    この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindleペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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  • 日本好きだけど日系企業だ働きたくない

    日本好きだけど日系企業だ働きたくない

    センターピープルの2019年6月19日の人事セミナーで行ったパニラ・ラドリンの「日本好きだけど日系企業だ働きたくない」スピーチのスクリーンキャストです。

     


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  • ヨーロッパの人材業界

    ヨーロッパの人材業界

    私の会社では在イギリス日系企業の社員数ランキングを管理していますが、最近ランクインした2社はいずれも人材業界の企業で、トラスト・テックとアウトソーシングでした。両社とも過去4年以内にイギリスで複数の人材会社を買収し、ドイツ、オランダ、ポーランドでも人材会社を買収してきました。

    この動きを見ていて、13年前のことを思い出しました。イギリスと東欧で複数の企業を買収した別の日系人材会社のコンサルタントをした時のことです。買収したヨーロッパの企業が互いの連携を高め、統合的な戦略と構造を持つための方法を探してほしいと依頼されました。

    しかし、ヨーロッパの人材市場はそれぞれ非常にローカルで、独自の慣習と法令があることがすぐに分かりました。最終的にその会社は、日本でさらに大手に買収され、国内市場を重点とする戦略を取るようになったため、ヨーロッパ市場から撤退しました。

    今回ヨーロッパ事業を拡大させた2社の戦略的な意図は、売上高拡大という以外にあまり明確ではありません。海外で事業展開している日系企業の顧客に対して製造およびIT分野の人材を提供するとしていますが、これはヨーロッパよりもむしろアジアでのことと思われます。

    ヨーロッパの日系メーカーは製造拠点を東へ移しているため、ポーランド、チェコ共和国、スロバキアなどのほうが需要があるでしょう。

    イギリスは現在、エンジニアリングとITの人材が不足していています。EU離脱によってEU加盟国の国籍者がイギリスでの在住許可や労働許可を制約されることになれば、さらに悪化すると見られます。EU加盟国からイギリスへの人口流入はすでに劇的に減少し、医療、建設、食品加工などの業界で労働力不足を引き起こしています。

    EU離脱の影響を別にして、イギリスの人材市場で過去10年間に起きた主な変化と言えば、規制強化と法令順守の負担増です。日系の人材会社が突如としてイギリス最大の日系雇用主のランキングに食い込んだ理由は、派遣社員が今の法令では人材会社の社員と見なされるようになり、年金や他の福利厚生の受給資格を有するようになったからです。このため人材会社は、賃金の男女差の報告要件やEUGDPR(一般データ保護規則)などを順守しなければなりません。

    業界関係者によると、ヨーロッパの人材会社には単に人材を見つけて紹介する以上のことが求められています。人材不足や多様な人材雇用のプレッシャーがあるため、データから洞察を得て、創意工夫を凝らすことで、顧客企業における役職と職務、および福利厚生や報酬体系の変更を支援し、雇用主としての魅力を高められるようサポートしていく必要があります。

    これには、顧客企業に深く介入し、現地市場の人材プールにも精通する必要があります。このように考えていくと、日系の人材会社がヨーロッパの業界にどのような付加価値をもたらせるのか、ヨーロッパ市場から何を学べるのかは、いささか不明です。ということは、やはり売上高拡大だけが買収の目的なのかもしれません。

    この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindleペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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  • ヨーロッパのスキル不足

    ヨーロッパのスキル不足

    イギリスの人事教育協会と人材会社のAdecco1,000社を対象に行った最近の調査で、イギリス企業の10社に7社が欠員補充に困難を来たしていて、40%が1年前よりも必要な人材を見つけにくくなったと回答しました。

    この状況を悪化させているのが、イギリスのEU離脱です。イギリスで働いている外国出身者は、前年から58,000人減少しました。その前の1年間は263,000人増だったのですから、対照的な傾向です。これは主に、EU加盟国からイギリスに来る労働者の減少に起因しています。

    しかし、人材不足はイギリスだけの問題ではありません。日本貿易振興機構(ジェトロ)による2017年末の調査によると、ヨーロッパの日系企業が挙げた最大の事業課題が「人材確保」でした。これにはドイツやオランダだけでなく、ハンガリーやチェコ共和国などの中欧と東欧の国が含まれています。

    では、日系企業は、同じ熟練労働者の獲得を目指す現地企業とどうすれば競争できるのでしょうか。

    雇用主としてのブランド力を訴える方法を日系企業に説明する際に私がよく使うのが、フォンス・トロンペナールス氏とチャールズ・ハムデンターナー氏が開発したモデルです[1]。ヒエラルキーの度合いとタスク志向か関係志向かに基づいて、企業文化を「誘導ミサイル」、「エッフェル塔」、「インキュベーター」、「ファミリー」の4つに分けるマトリックスです。

    誘導ミサイルは、典型的な米国流のセールス志向の組織で、目標、成果、報酬などで社員の意欲を引き出します。

    エッフェル塔は、ヒエラルキーの度合いが高い組織で、組織構造を重視します。社員にとってのモチベーションの源は、組織内での地位と昇進の見通しです。

    ヨーロッパの多くの人は、エッフェル塔のスタイルの会社に慣れているため、日系企業に入社すると、キャリアパスが定義されていないうえ、明確な戦略的方向性すらないように見えることに戸惑います。

    他のヨーロッパの社員、特に研究開発、クリエイティブ、IT、設計エンジニアリングなどの分野の社員は、インキュベーターのスタイルに馴染んでいます。このタイプの組織では、主な動機は報酬でも地位でもなく、成長すること、そして自分のスキルを活かしてイノベーションを起こすことです。

    日本の会社のほとんどは、ファミリーのスタイルに属します。社員は家族の一員として、一族の存続と評判に寄与したいと考えます。こスタイルの会社では、報酬や地位で社員を動機付けることは困難です。報酬や地位はパフォーマンスではなく年功に基づいているからです。

    ヨーロッパの日系企業は、福利厚生が良いけれども給与は平均的という評判を持っています。また、日本人でなければ(つまり家族の一員でなければ)どこまで昇進できるかに限界がある、という感覚もあります。

    ヨーロッパの人にとって日系企業の魅力は、他の企業とは異なっていて興味深い点、そして良きコーポレート・シチズンと見られている点にあります。しかし、ヨーロッパ出身者であっても家族の一員になれるのだと感じられなければなりません。人材を確保したいと思うのであれば、日本の本社へ赴任させるなどして、会社のビジョンや価値観を理解できるようサポートする必要があります。

     


    [1]Riding the Waves of Culture: Understanding Cultural Diversity in Business, Fons Trompenaars & Charles Hampden Turner, (Nicholas Brearley: 2003), 159. 邦訳版『異文化の波グローバル社会:多様性の理解』(白桃書房)

    Pernille Rudlinによるこの記事は、20181221日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

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  • シチュエーショナル・リーダーシップ

    シチュエーショナル・リーダーシップ

    ヨーロッパ勤務になった日本人社員が最も難しいと感じることのひとつが、様々な国籍の人たちと働かなければならないことです。勤務地がロンドンであれ、デュッセルドルフであれ、アムステルダムであれ、同僚がイギリス人、ドイツ人、あるいはオランダ人だけということは、おそらくないでしょう。ルーマニア、リトアニア、ポーランド、スペイン、さらにはインドや中国の出身者も含まれている可能性が多々あります。

    日本で提供されているグローバルなリーダーシップ研修やマネジメント研修の多くは、アメリカのモデルに基づいています。ヨーロッパの人はアメリカ流の経営スタイルに馴染んでいるため、少なくとも表面的には寛容に受け止めるでしょう。ただし、ヨーロッパの社員に表面的なコンプライアンス以上の行動を取ってもらおうと思うのであれば、これらの画一的なモデルの多くは、究極的に有効ではありません。事実、士気を下げる可能性があり、特にあまりにも厳密に数値目標を重視するとそうなります。

    ヨーロッパのマネージャーがアメリカ流のモデルで最もうまく機能すると感じているのは、「シチュエーショナル・リーダーシップ」と呼ばれるスタイルです。何も新しい理論ではなく、1960~70年代にアメリカ人のポール・ハーシー氏とケン・ブランチャード氏が開発しました。これがヨーロッパの事情に合う理由は、唯一絶対の優れたリーダーシップ・スタイルは存在しないという考え方を基本としているためです。シチュエーショナルなリーダーとは、状況を見極めたうえで、自分のリーダーシップのスタイルを柔軟に調整し、適切にコミュニケーションできる人です。また、部下それぞれの「パフォーマンス・レディネス」、すなわち能力と意欲のレベルを考慮に入れます。

    国ごとの文化の違いは、このモデルでは特に言及されていません。が、私のトレーニングでシチュエーショナル・リーダーシップを取り上げる際は、ヨーロッパ各国の傾向として知られるものに必ず結び付けるようにしています。具体的には、トップダウンの意思決定とコンセンサス構築のどちらを好むか、フィードバックを提供したり指示を出したりする際に直接的なコミュニケーションと間接的なコミュニケーション、フォーマルとインフォーマルのどちらを好むか、といった違いです。

    日本人の長所と短所

    もちろん、ヨーロッパに着任して日が浅い人にとっては、これがかなりの負担に感じられる可能性があります。とりわけ、伝統的な日本の会社に勤めてきた日本人にとっては難しいことかもしれません。自分の気持ちや能力には関係なく、とにかく上司が言ったことを遂行すべく最善を尽くすという文化に慣れているためです。

    でも、日本人のマネージャーには2つの大きな長所があると、私は考えています。あくまで一般論であって全員には当てはまらないかもしれませんが、25年にわたって日本企業にかかわってきた経験のなかで私が知り合った日本人のほとんどは、自分の能力を謙虚に受け止めていて、かつ他の文化に対して好奇心が旺盛です。つまり、学ぶ意欲があり、自分にとって普通のやり方でも変える必要があるかもしれないということを受け入れる姿勢があるのです。

    パニラ・ラドリン著 帝国データバンクニューズより

    シチュエーショナル・リーダーシップについてパニラ・ラドリンの日本人マネージャー向けのパフォーマンス管理多国籍チー日本人マネージャー向けのパフォーマンス管理ムと円滑に働く方法のオンラインコースお勧めします。

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  • アラブの文化と日本の文化

    アラブの文化と日本の文化

    先月ドバイでセミナーを開催した際、現地アラブ人の参加者が突然手を挙げて、次のように言いました。「私の家族に共通することがたくさんあります!」。日本人のグループ志向や言葉に表さないコミュニケーション、以心伝心や思いやりといった概念を説明していた時のことです。

    そこで彼女に、どのような点で日本人とアラブ人は似ているかを聞いてみたところ、次のような話をしてくれました。彼女の家族は、かつての日本の伝統的な家族のように3世代で同居しているそうです。ある日の夕方、おばあさんが「今晩のご飯は何にするつもり?」と聞いてきました。若い彼女は、マクドナルドのハンバーガーを買いに行こうと思っていたところでしたが、おばあさんがお腹をすかせていると察して、何を食べたいかを聞き返しました。すると、おばあさんはこう言ったのです。「お腹がすいているわけじゃないの。何もいらないわよ」。

    彼女は結局、外へ出かけて伝統的なアラブの食事をテイクアウトで持ち帰りました。でも、おばあさんに見せると、おばあさんはいらないと言います。そこで家族で夕食を食べ始め、おばあさんの分を残しておいたところ、最後はおばあさんが食べ始めたそうです。

    私は以前にも、アラブ人からアラブの文化と日本の文化が似ていると言われたことがあります。なぜそう思うかを尋ねると、たいていは、家族を優先する点、人間関係でビジネスをする点、年上の人を敬う点、それにこの女性の話にも表れているように、自分のニーズを非常に間接的に表現する点といった答えが返ってきます。

    ならば、アラブのビジネス文化に日本人が適応するのは簡単かと思うかもしれませんが、実際には、ドバイに駐在する日本人の多くが直面する問題が2点あります。第一に、ドバイ自体が世界で最も多文化な都市のひとつであることです。人口の88%が外国人なのです。ほとんど全員が就労ビザで働いていて、永住権は持っていません。ですから、私のワークショップに参加する日本人駐在員も、ヨーロッパからインドからレバノンまで、きわめて多国籍の部下を持っています。

    第二に、グループ志向ということは、内と外を明らかに区別する意識を持っていることを意味します。ドバイの駐在員にとって、ドバイ社会で「インサイダー」になることは非常に困難です。例えば、アラブのビジネスピープルの間では、ラマダンの間に顧客の家を訪問して断食を終える夕食を共にするのが慣習になっています。アラブの文化では、おもてなしが非常に重要な価値観なのです。しかし、アラブ人でない人が顧客の家を訪問するというのはとても勇気がいることであるのは、容易に想像できます。

    ですから、日本企業は、若いアラブ人の大卒者を雇い入れてトレーニングとキャリアパスを提供するという、賢明な方法を選んできました。しかし、アラブ人にも驚くほど多様性があります。おばあさんの話をしてくれた女性はスカーフで頭を覆っていましたが、その隣のやはり若い大卒女性は伝統装束のアバヤを着て、でも長い髪を出していました。インターナショナル・スクールで教育を受けてきた彼女は、私がアメリカの価値観を説明した時に、むしろ自分の価値観に近いと言っていました。

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  • 私の新年の抱負 ― 話すよりも尋ねる

    私の新年の抱負 ― 話すよりも尋ねる

    クリスマスパーティーに行く前に少し時間があったのでロンドンのバーで時間をつぶしていたところ、隣のテーブルに座っていた年配のアメリカ人の男性が突然身を乗り出して話しかけてきました。「イギリスのEU離脱について聞いてもいいですか」。聞くとその方は金融業界を専門とする弁護士で、今は半ば引退して仕事は少なめにしているものの、これから出席する米英間の夕食会の準備としてイギリス人の考え方を知りたいと思っているとのことでした。

    私はこのリクエストを快諾し、ただし交換条件として米国についての彼の見解を聞かせてもらうことにしました。その週の後半に日本の新聞からトランプ氏の選挙の影響について取材されることになっていたからです。こうして私たちはしばしの意見交換をし、今のように不透明で混乱しがちな世の中にあって、グローバルなビジネスピープルが対話を続けることが重要だという点で意見が一致しました。そして今後も連絡を取り合うことにして別れました。

    この方は、私が聡明そうで分別がありそうに見えたから声をかけたと言ってくれました。そんなふうに見えたとしたら、原因の一部は、2016年に入って白髪を隠さないことにしたせいかもしれません(新しい写真のとおりです)。50歳になったことを否定するより誇りにしようと思ったのです。とはいえ、この方と話したことで、見た目や話し方に年齢なりの知恵が表れるのを待っているのではなく、他の人の見方や考え方を自分から求めるのが真の知恵なのだということを学びました。

    選挙運動中の政治家はよく市民の声に「耳を傾ける」と言いますが、声の大きい人ほど「耳に届く」のは否めません。イギリスの国民投票と米国の選挙の際も、声高な人々が人種差別や性差別、あるいは妄想とも言えそうなことを様々に語っていました。その結果、多くの人が「他人」をシャットアウトして、同じ見方をする友達だけとソーシャルメディアでコミュニケーションしていました。

    でも、「耳を傾ける」だけでは十分ではありません。普段は話さないような相手に自分からアプローチして、どう思うのか、なぜそう思うのかを尋ねる必要があります。これは私がセミナーで努力している点です。実際、参加者が自分の経験を共有したい、別の解決法もあると言ってくれたほうが、自分の知識を単に話すよりも私にとって格段に楽しいのです。

    ヨーロッパ駐在の日本人マネージャーに私がよく説明するのは、ヨーロッパの人は常に「なぜ」を知りたがるため、理由を説明できるよう準備しておかなければならないということです。また、ヨーロッパの人は、意見を求められたい、相談されたいとも考えています。「イエス」か「ノー」かで答えられない質問をされたいのです。イギリスとイタリアが示したように、「イエス」か「ノー」かの投票は、物事を明確化するよりもむしろ混乱を招くことがあります。イエスかノーかで質問すれば、ストレートな拒絶を招き、なぜ拒絶したのか、代わりにどうであったなら許容したかを尋ねる余地がないためです。

    そこで私の新年の抱負は、自分の意見は内に留めておいて、他の人の意見を求めること、なぜそう思うのかを尋ねることです。

    パニラ・ラドリン著 帝国データバンクニューズより

    ヨーロッパ人の「なぜ」に対してどう答えればいいか?パニラ・ラドリンの多国籍チームと円滑に働く方法のオンラインコースをお勧めします。

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  • フィードバックは言葉だけの問題にあらず

    フィードバックは言葉だけの問題にあらず

    在ヨーロッパの日本人駐在員のマネージャーを対象に、フィードバックとパフォーマンス評価についてトレーニングをしてほしいという依頼が、このところ急増しました。顧客企業の人事担当者と話したところ、日本人マネージャーと部下のチームがうまくいかないことが増えているとのことでした。

    ヨーロッパの社員が日本人マネージャーのフィードバックの仕方に不満を抱くというのは、何も新しいことではありません。よくある不満は、フィードバックがまったくない、あるいはネガティブなフィードバックや定量的なフィードバックしかもらえない、といったものです。私は通常、フィードバックという習慣が日本の企業文化には定着していないせいだと説明しています。また、日本の社員はチームで働くのに慣れていて、個人としてパフォーマンスを評価されることはあまりありません。それに、優秀な社員というのは、人から言われなくても自分を向上させられる社員だと思われています。

    1990年代に日本で働いていた頃、多くの日本企業が成果主義を導入し始めましたが、あまり成功しなかったことを覚えています。個人を評価することで、日本の職場の強みである協調的な働き方や知識を惜しまず共有する雰囲気に悪影響が及んでしまったのです。

    1990年代以降に開発された日本企業の査定制度は、ヨーロッパの制度に比べてはるかに定量的です。マネージャーは、パフォーマンスや目標達成度のみならず、行動や姿勢、能力に対しても数値のスコアを付けます。しかし、ヨーロッパでは通常、行動や姿勢や能力に関しては、「期待を満たした」、「期待を上回った」、「期待を下回った」といった定性的な評価のみをします。

    日本の定量的なアプローチは、より客観的で、個人的な感じがしないと言えるでしょう。数値は全社的に分析することができ、解釈の余地や言葉の壁に左右されません。 一方、ヨーロッパでは、対話を促すために定性的な評価を用います。上司が部下に対して期待することを説明したうえで、能力開発の機会について合意し、上司からのサポートやトレーニングのニーズ、今後のキャリアパスなどについて共通の理解を確立しようとします。

    教育制度の違い

    こうしたアプローチが用いられる背景には、教育制度の影響があります。私の経験では、日本の教育制度は、事実や方法についての知識を調べる試験を中心としていて、多くは選択式の問題です。こうした試験には、明らかな正解と不正解が存在するという前提があります。

    ヨーロッパの教育では、クリティカル・シンキング(批判的思考)を重視し、物事の背後にある理由を理解しようとします。試験はたいてい論文で、理系の科目でもそうです。採点に当たっては、事実や方法論が正しいかどうかもさることながら、立論や論拠の質が問われます。

    この結果、ヨーロッパの社員は、行動や姿勢や能力のスコアを黙って受け入れたりしません。マネージャーが抱いている期待を最初に明確にしたうえで、コンスタントにフィードバックを提供してくれることを求めているためです。そして、評価を付ける際には、期待に応えたかどうかを論拠を示して説明してほしいと考えます。特にミレニアル世代の社員は、このような指導を期待しています。日本人のマネージャーがフィードバックについてのトレーニングを必要とするのも無理はありません。言葉の問題だけではないのです。

    帝国データバンクニューズ 2017年10月11日 より

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