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在欧日系企業

Home / Archive by Category "在欧日系企業" ( - Page 4)

Category: 在欧日系企業

ドイツのAEQUITAが日本のNIFCOのドイツ子会社を買収

ドイツのAEQUITAは、昨年NisshinboのTMD Frictionを買収した後、別の日本企業を獲得しました。それは、2014年にNifcoによって買収されたドイツ企業KTWのドイツ子会社を買収します。Nifco Germanyは、自動車産業向けの射出成形プラスチック部品を開発・製造しており、ドイツに約766人の従業員を擁しています。また、アメリカとセルビアにも事業を展開しています。

この買収がNifco UK(1990年にElta Plasticsを買収)や、グリーンフィールド投資と思われるNifco Polandには影響を与えないと推定されています。Nifcoはすでに2022年にスペインの子会社をGrupo Taurusに売却しています。

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7年後の在英日系企業 ― 新たな第3フェーズ

エグゼクティブ・サマリー

EU離脱を決めたイギリスの国民投票から7年が経過し、日系企業の長期計画がもたらすレジリエンスのメリットが明らかになっています。在英日系企業の従業員数は2018/19年以降、減少しましたが、これは主に自動車業界によるもので、ホンダによるスウィンドン工場の閉鎖を端緒としています。自動車以外の製造業は雇用・投資とも安定していますが、イギリスに新たに進出した製造業企業はありません。

卸売業界の従業員数も減少しました。これは、日系企業が欧州の物流・倉庫・コーディネーション機能をEUへと移したためです。金融業界ではイギリスから相当規模の投資引き揚げがありましたが、とはいえ従業員数は安定していると見られます。

EUの日系企業数という点ではドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでになり、また日本からの駐在員数ではイギリスを抜いて最多になりました。

イギリスのEU離脱と新型コロナウイルス感染症の激動が収束した今、日系資本の投資に新たな第3フェーズが浮上しつつあります。これはむしろ、気候変動、エネルギー、防衛および安全保障をめぐる地政学的な懸念を見据えたフェーズです。イギリスはこの局面において重要なパートナーになると見なされていますが、これら産業への長期的な政策コミットメントを強化する必要があり、それには大型投資と地元コミュニティの支持を取り付けるだけでなく、EU・アフリカ・中東と確実に協業し同調を図っていくことが求められます。

目次

在英日系企業の従業員数は2018/19年まで増加の後に減少… 3

日系企業数はドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでに成長… 5

閉鎖した企業数はドイツよりもイギリスで多数… 6

2017年以降に新設された日系企業数はイギリスとドイツが互角… 7

イギリスはなおも日本企業のM&Aターゲットだが、以前よりも規模が縮小… 7

日本からの投資先としてスイスがイギリスを抜き、正味金額で欧州最大に… 8

製造業の雇用は自動車を除いて安定的に推移… 11

イギリスの金融サービス業界は正味ダイベストメントながらも従業員数は安定… 12

日本からの駐在員数はドイツがイギリスを抜いて欧州の最多国に… 13

これらすべてが何を意味するのか? 新・旧トレンドの加速… 15

在英日系企業の従業員数は2018/19年まで増加の後に減少

2023年4月に発行された東洋経済のデータベース[1]によると、在英日系企業の従業員数は9万8,000人で、2015/16年の10万6,000人から減少しました。

ラドリン・コンサルティングのデータベースは、買収を通じて日本の親会社の傘下に入った企業が多く含まれているため、2021/22年の従業員数は約16万人で、2015/16年の15万6,000人からわずかに増加しています。

どちらのデータにも共通しているのは、2018/19年が従業員数のピークで、以降は減少している点です。これはフランスやドイツとは異なるパターンで、両国とも従業員数が2020/21年にピークに達し、その後減少しました。オランダは増減しながらも、全体としては成長基調です。

従業員数を業界別に見ていくと、イギリスの雇用縮小はほぼ完全に自動車業界の減少によるものであることが伺えます。同業界では約1万1,000人の雇用が製造・卸売業務で失われました。

 

日系企業数はドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでに成長

東洋経済は、日本企業の子会社である現地法人が2015/16年時点でイギリスには875社、ドイツには764社あったと推定しています。それが2022/23年にはイギリスが982社、ドイツが975社となりました。

ラドリン・コンサルティングの推定値には、法人化されていない支店が含まれており、また買収の結果として日本企業の子会社になった企業が東洋経済のデータよりも多く含まれています。2023年6月時点で、そうした組織がドイツには1,113社、イギリスには1,151社ありました。

 

閉鎖した企業数はドイツよりもイギリスで多数

ドイツでは2018年以降に閉鎖した企業数が48社、イギリスでは2017年以降に閉鎖した企業数が145社でした。イギリスで正味閉鎖数が最多だったのは卸売業界です。説明として考えられるのは、倉庫・物流業務の重点がEU単一市場へと移動して、在英拠点は欧州の卸売コーディネーション機能を果たさなくなったため、解消されたか支店に転換されたことです。イギリスで閉鎖された日系企業の業界別の内訳は次のとおりです。

  • 自動車 26社
  • サービス 41社
  • 卸売 39社
  • 製造 27社
  • IT 11社
  • 金融 9社
  • 物流 8社
  • 化学 6社
  • 小売 4社
  • 食品 4社

(一部企業は複数の業界に含まれる)

これらの閉鎖の多くは、イギリス市場から撤退したというよりは統合や合併によるものです。

2017年以降に新設された日系企業数はイギリスとドイツが互角

2017年以降にドイツに新設された日系企業は64社、イギリスは63社でした(うち4社はすでに売却または閉鎖されています)。

イギリスに新設された63社の業界別の内訳は次のとおりです。

  • サービス 35社
  • 卸売 14社
  • IT 6社
  • 金融サービス 6社
  • 製造 3社
  • エネルギー 3社(蓄電、再生可能、生産)
  • 物流 1社(複数の日系企業のコンテナ事業の合併後)
  • 自動車 1社(カルソニックカンセイとの合併後に設立されたハイリマレリ)

(一部企業は複数の業界に含まれる)

イギリスはなおも日本企業のM&Aターゲットだが、以前よりも規模が縮小

2017年から2023年現在までの間に日本企業に買収された企業の数は、イギリスで179社、ドイツで79社を把握することができました。これは網羅的な数値ではなく、弊社の調査力がイギリスに偏っている事実を反映している可能性があります。

さらに、これらの買収の多くは、イギリス企業やドイツ企業を直接的に買収するものではなく、米国企業や欧州の他の国に本社がある企業を買収した結果として、そのイギリス子会社やドイツ子会社が傘下に収まったという経緯でした。また、現時点で把握しきれていない最近の買収もあるかもしれません。

これらの点を念頭に置いて見ていきますが、イギリスで行われた買収179件のうち123件と過半数を占めたのが、2017年から2019年の3年間の案件で、その後は年間25社前後かそれ以下のペースでした。ドイツでも類似したトレンドが見受けられます。

2017年以降に行われた欧州企業の買収のなかでも主だった案件は次のとおりです。

  • 武田薬品が2019年、アイルランドの製薬会社、シャイアー(ロンドン証券取引所の上場企業)を640億ドルで買収
  • 日立製作所が2020年から2022年にかけ、スイスのABBのパワーグリッド事業を110億ドルで買収
  • ルネサスが2021年、米国で設立されイギリスに住所を置いていた半導体会社、ダイアログを59億ドルで買収
  • 三菱商事と中部電力が2019、オランダのエネルギー会社、エネコを44億ドルで買収
  • 大正製薬が2018、ブリストル・マイヤーズ スクイブからフランスの製薬会社、UPSA SASを16億ドルで買収
  • 日立レールが2015年から2019年にかけ、イタリアのアンサルドSTSを15億ユーロで買収
  • ニデック(日本電産)が2017年、エマーソン・エレクトリックのモーター、ドライブ、発電機事業を12億ドルで買収(イギリス・ウェールズのドライブ製造会社、コントロール・テクニクスとフランスのモーター製造会社、ルロア・ソマーを含む)
  • 豊田自動織機が2017年、オランダの物流会社、ファンダランデを13億ドルで買収
  • NECが2018、デンマークのIT会社、KMDを12億ドルで買収
  • 富士フイルムが2019年、米国バイオジェンの保有するデンマーク・ヒレレズの製造子会社を9億3,000万ドルで買収

イギリス企業は過去に日系企業が追求した最大級のM&A案件のターゲットとなってきました。ソフトバンクによるARM買収、日本板硝子によるピルキントン買収、そのほか金融サービス業界の様々な買収がありました。この傾向は、ルネサスによるダイアログ買収を除き、継続していないように見られます。ただし、イギリスの人材斡旋・派遣、ドライブ、タイヤ、食品、紙卸売などの業界で、比較的小規模な買収が行われています。

日本からの投資先としてスイスがイギリスを抜き、正味金額で欧州最大に

前述の大型案件は、必然的に日本から欧州への資本の流れに影響し、結果として投資総額が年ごとに大きく増減しました。

2017年以降の日本からの直接投資の正味累計額では、それまでの最大投資先だったイギリスを抜いてスイスがトップに立ちました。2019年にスイスの卸売・小売業界に多額の投資が流入した理由は、日立によるABBパワーグリッドの買収に関係していたと思われます。スイスとイギリスに次ぐ3位はオランダ、4位はアイルランドでした。

イギリスへの資本の流れは2020年にマイナス、すなわち正味ダイベストメント(投資撤退)となりましたが、これは通信業界によるもので、ソフトバンクに関係している可能性があります。同社の投資活動のかなりの部分がロンドンで行われているためです。また、2018年にはサービス業界が正味ダイベストメントとなりました。この年に同業界では日本企業による子会社の売却という点で目立った動きがなかったため、在英拠点の資産がEU拠点に移転されたためかもしれません。例えば、ソニーが知的財産権の所有法人を変更しました。

製造業では、イギリスの電気機械、食品、化学品への投資が輸送機器(自動車)への投資を上回り、またこれら3分野への投資額は、同期間のドイツと比べても格段の差がありました。

ドイツとイギリスに対する日本からの直接投資の2017年以降の累計額は次のとおりです[1]。

業界 ドイツ イギリス
食品製造 8億ドル 98億ドル
化学品・医薬品製造 31億ドル 71億ドル
電気機械製造 6億ドル 78億ドル
輸送機器製造 93億ドル 8億ドル
通信 6億ドル 453億ドル
卸売・小売 20億ドル 32億ドル
金融・保険 82億ドル -23億ドル
サービス 12億ドル -345億ドル

国別では下図のとおり、アイルランドが化学品・医薬品製造業界で2019年と2020年に多額の資本流入と資本流出を経験しました。これは武田・シャイアーの案件に関係したものと思われます。デンマークの2019年の資本流出は、武田がデンマークの2工場をオリファームに売却したことに関係しているかもしれません。

日本の財務省のデータは、注意して扱う必要があります。機密保持の理由で提供されていないデータが多々あるためです(例えばフランスや金融サービス業界)。

製造業の雇用は自動車を除いて安定的に推移

2019年と2021年に自動車業界でイギリスからのダイベストメントがあった理由は、ホンダのスウィンドン工場閉鎖に伴うものと見られます。2019年2月に発表され、2021年7月に最終的に閉鎖されましたが、この間に同業界の日系サプライヤも20社ほどが在英拠点を閉鎖しました。

自動車業界の日本からの投資が最も流入したのはドイツでした。2019年の大きな流入は、おそらく積水化成によるプロシートの欧州事業買収に関係しています。この案件にはドイツ、ポーランド、チェコ共和国の工場が含まれ、イギリス工場は2021年に閉鎖されました。

イギリスの自動車業界に対する二次的な投資もあったかもしれませんが、このデータには反映されていません。自動車業界の投資先としてベルギーがドイツに次いで2番目となった理由は、ほぼ間違いなくトヨタが欧州事業の統括会社を置いていることによるものです。このため、この金額の一部はイギリスにあるトヨタの工場に流れたはずです。

2018年にはイギリスの自動車業界に比較的大きな資本流入がありましたが、これは日産が2019年にサンダーランド工場で「ジューク」の生産を開始し、その後さらに第3世代の「キャシュカイ」の生産も開始したことに関係している可能性があります。

自動車以外の製造業では、2019/20年まで従業員数が増加し、その後は横ばいとなりました。弊社が調査した日系製造業企業のほとんどは、EU離脱に向けた対応委員会を設置し、様々なシナリオを想定して計画を策定し、投資を行いました。こうしてコストとメリットを分析した結果として、製造業務を閉鎖して他国に移転するよりは居留まって対応策に投資するほうが合理的だと結論したのでしょう。

イギリスの金融サービス業界は正味ダイベストメントながらも従業員数は安定

ラドリン・コンサルティングのデータによると、2017年から2022年にかけて、イギリスの金融業界に対する日本からの投資は累計でマイナスになりましたが、従業員数は比較的安定していました。ただし、これは確認が困難です。日系銀行の大手3社のうち2社が、在英拠点をオランダの欧州本社または日本の本社の支店と位置付けていて、イギリスのみの従業員数が開示されていないためです。

アイルランドは、航空機リースと航空機ファイナンスのハブになっているため、日本の金融サービス業界が2017年以降に最も投資した国になったと見られます。例えば、2020年から2022年にかけて、ジャパンインベストメントアドバイザーの子会社、JPリースプロダクツ&サービシイズがアイルランドにエアバスと合弁でリース事業会社を設立し、航空機数機を取得したことが、2020年の大型投資に寄与した可能性があります。

日本からの駐在員数はドイツがイギリスを抜いて欧州の最多国に

全体として日本からの駐在員はEMEA全域で減少傾向にあり、コロナ収束後も戻っている様子は見られませんが、オランダとアラブ首長国連邦は例外です。

在英(主にロンドンとその周辺)の駐在員数の変化は、欧州の地域本社機能がドイツとオランダに移りつつあることを示していると言えるでしょう。特に金融サービス会社と商社は日本人駐在員の割合が高いため、この傾向が顕著に反映されがちです。

これらすべてが何を意味するのか? 新・旧トレンドの加速

過去7年にわたって在英日系企業に関するデータを集めながら、オープンマインドを保つよう心がけてきました。とはいえ、イギリスのEU離脱はすでに存在していたトレンドを加速させるものだという、全体的な見解を持っていたことは認めます(EU離脱が膨大な時間と労力とリソースの無駄だという見方を別にして)。

そこで、今回このデータを見るに当たり、新・旧のどのようなトレンドが浮上してくるかに注目しました。

拙著『The History of Mitsubishi Corporation in London』[1]ではロンドンの三菱商事が1915年からどのように発展したかを解説しましたが、輸出入の貿易業者から地域コーディネーターへと短期に転換したことが明らかでした。これは事業がグローバル化する際の著名なモデルに従っていました。純粋な輸出事業から現地製造事業へ、そして何らかの多国間事業へと展開し、地域レベルのセンター・オブ・エクセレンスを有するようになるという進化の過程です。

三菱商事のような日本の商社は、直接的に製造業を営むことはありませんが、しばしば製造業に投資しています。1989年に三菱商事がイギリスでプリンセス・フーズを買収したのも、その一例でした。これらの事業は主にロンドンを拠点としていて、その理由は、ロンドンがグローバルにも地域的にも重要なハブだと見ているためです。若手社員が情報収集し、国際政策への影響力の及ぼし方を学ぶうえで、良いトレーニングの場になるのです。

EU離脱が現実になった直後に、在英日系企業の経営幹部が多数集まった会合に出席したことがあります。当時の三菱商事EMEA統括者がスピーチに立ち、イギリスのEU離脱は日系企業にとって逆風になると思うが、同社がイギリスから撤退することはないと明言しました。

私自身、三菱商事で経営企画やコーディネーション業務に携わった経験があるため、同社や他の日本の財界[2]企業にとって在英拠点の価値とは戦略的な価値であるということが、本能的に理解できました。とはいえ、ひとたび離脱してしまえばイギリスのEUでの影響力は弱まり、イギリスが日系企業にもたらす戦略的な価値も失われるのではないかと、私は危惧していました。

2017年以降にイギリスから撤退した唯一の日本の商社は双日で、三菱、三井、住友、伊藤忠、丸紅といった大手ではありません。双日は化学品貿易に注力すると決め、その本社をドイツに置くことにしました。ドイツは伝統的に、この地域内の化学品製造のハブと日系企業から見なされています。

イギリスから撤退した他の地域本社は、グローバル化の最初のフェーズに関係した動きでした。日本から製品を輸入していた卸売業企業でしたが、地域コーディネーションと倉庫・物流の拠点をEUに移しました。これはオランダで日系企業の従業員数と駐在員数が大幅に増加した背景となっています。同時に、日本からの駐在員は欧州全域で減少していて、これは卸売業企業の多くがシニアマネジメントを現地化していることの表れかもしれません。

第2フェーズの企業、すなわちイギリスに製造拠点を開設した企業は、やはりイギリス外へ重点を移し、サプライチェーンを引き連れて行きました。消費者家電の製造業企業はかなり前に撤退していたため、主な懸念は自動車業界でした。前述のとおり、自動車業界による欧州への投資を2017年以降に最も引き付けたのはドイツでした。ただし、買収に伴う単発の資本流入だった可能性はあります。ベルギーへの投資の一部は、トヨタ経由でイギリスに流れる可能性があります。また、トヨタも日産もイギリスから引き揚げる兆候は示していません。

第3フェーズは、地域コーディネーションやセンター・オブ・エクセレンスによる事業展開の段階ですが、イギリスではこれがより色濃く表れるようになっています。ただし、地域コーディネーションの中心的な業務とは製造業務のためにサプライチェーンを管理すること、あるいは日本からの輸入品のために物流と倉庫を管理することであり、これらがイギリスを離れた今、イギリスに残ったのは、地政学的な観点に立つ戦略的な投資家で、業界としてはエネルギー、輸送および通信のインフラ、防衛、さらにバイオ・製薬と半導体の研究開発です。

これらの投資家は、海外の成長市場を求めているわけではなく、1990年代から2010年代の失われた30年間に日本企業がイギリスや他国で買収を行ったのとは異なります。動機となっているのはむしろ地政学的な懸念で、気候変動に関係する要因や、通信、エネルギー、デジタルデータなどの業界で敵対国への依存を低減するニーズに関係しています。

現在のイギリス政府は産業政策にまったく触れようとしませんが、イギリスの多数の政治家がこの新しいフェーズを認識していて、イギリスの課題が日本の課題と重なると気付いていることは明らかです。最近ロンドンで開かれた日英イベントでも、現職と歴代の首相および内閣に対する困惑感が伺えました。日本文化のソフトパワーを伝えるジャパン・ハウス・ロンドンの社外取締役としてある展示会に出席してきましたが、ほぼ完全に再生可能エネルギーに焦点を当てていました。

日本政府は先頃、国内企業が開発・生産する防衛装備の規格を米欧と統一すると発表[3]しましたが、これは補修・維持費の抑制に加え、国内企業の事業機会の拡大を狙いとしていて、まさにこの新しい第3フェーズに重なります。イギリス、イタリア、日本は戦闘機開発プログラムを統合し、次期戦闘機の実証試作機を2027年までに共同開発しようとしています。

これらの活動が必ずしもすべて円滑に運ぶことはないでしょう。例えば、日本の商社は、ロシアのLNG開発プロジェクトから撤退する様子は示していません。エネルギー供給の海外依存に及ぼす影響という点で、これは日本政府との協議の議題になっていたことでしょう。例えば、サハリン2プロジェクトは、日本のLNG輸入の約9%を供給しています[4]。

EU離脱後のイギリスで事業を継続するということは、第1フェーズと第2フェーズの企業にとっては、伝統的な輸出入と製造関連の貿易を維持することを意味しました。これらの企業は、あらゆる対応計画を練り、移転する必要のあるものは十分に前もって移転しました。イギリスに拠点を新規開設した製造業企業はなく、イギリスが単一市場に再加入するまでは、おそらくないでしょう。

第3フェーズの企業にとって、EU離脱後のイギリスで事業を継続していくとは、他の欧州諸国と協力・同調し、かつエネルギー、防衛、通信および輸送インフラ、研究開発といった分野でイギリスが欧州内外に対して有する好ましい影響力を活かしていくことを意味します。これは、第2フェーズの製造分野のプロジェクトのように数千人という雇用を創出してサプライチェーンをもたらすといった大衆受けする影響を及ぼすものではありません。事実、選挙という観点からはマイナスの影響になる可能性があります。原子力発電や風力発電、高速鉄道の開発プロジェクトで見てきたとおり、田園風景を破壊することや巨額の投資が必要になるという事実に対しては、常に反対の声があるからです。これは、日本企業が国内で直面する問題に似ています。

しかも、協業に際しては、単に欧州だけでなく、隣接するアフリカと中東も巻き込む必要があります。言うまでもなく気候変動はグローバルな取り組みを必要とし、1か国だけの環境保護主義などあり得ません。日本政府は過去何十年にもわたり、エネルギー小国であることを案じてきました。これが投資の大半を率いる要因となり、特に日本の商社は海外のエネルギー開発プロジェクトに投資してきました。商社はこれまで、しばしばイギリスの地域本社を通じて、アフリカと中東で水力発電から家庭用ソーラー・システムまで様々な再生可能エネルギーのプロジェクトに投資してきました。

日本企業は他の日本企業との取引を好むため、最初に上陸した企業の砦が確立すれば、サプライチェーンやサポートシステムに含まれる他社が追随します。これが1970~80年代にイギリスに進出した日系自動車業界で起きたことでした。このエコシステムは今もイギリスに確実に存在し、部品サプライヤの多くがエネルギー業界やインフラ業界に製品を供給できます。

この新しい第3フェーズのイギリスへの投資、およびイギリスを経由する投資は、工場の建設・改修にイギリス政府が補助金を出すといった方法で誘致されるものではありません。何年も経ってようやく実る長期的な結果のみに投資する意欲、また政治的なエネルギーを費やして持続可能な政府の政策とコミュニティからの支持を取り付けようとする意欲を示すことで誘致されるでしょう。

このレポートの PDF はここからダウンロードできます

[1] https://biz.toyokeizai.net/en/data/service/detail/id=860&academic=1

[1] https://www.mof.go.jp/english/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/ebpfdii.htm

[1] The History of Mitsubishi Corporation in London: 1915 to Present Day, Routledge Advances in Asia-Pacific Business, 2000 https://www.amazon.co.uk/History-Mitsubishi-Corporation-London-Asia-Pacific/dp/0415228727

[2] 財界とは、日本の実業家や財務金融関係者のコミュニティで、特に大きな資本力と影響力、政界とのつながりを有し、世界に対して日本を代表する立場にあると見なされている企業のコミュニティを指します。

[3] https://asia.nikkei.com/Business/Aerospace-Defense-Industries/Japan-to-standardize-arms-with-U.S.-Europe-for-joint-maintenance、2023年6月22日にアクセス

[4] https://www.reuters.com/business/energy/japans-mitsui-says-no-plans-exit-russias-sakhalin-2-lng-project-2023-06-21/

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2022年ヨーロッパ、中東、アフリカの日本企業上位30社

2022 年のヨーロッパ、中東、アフリカの日系企業上位 30 社 (以下からダウンロード可能) によると、日系企業上位 30 社の総従業員数は 2021 年の 575,962 人から約 3% 増加し、592,811 人* まで緩やかに増加しています。 EMEA 地域では日本企業に100万人位雇用されており、その約 60% がこれらの大企業グループで働いています。

スウィンドンの英国工場閉鎖のおかげでホンダが撤退しまして、オリンパスに取って代わられました。ホンダがTop30に残れば総従業員数は3%ではなく、 2% の成長になります。 EMEA で従業員数が減少した日本の企業グループは、主にホンダだけでなく、日産 (-8%)、NSG (-6%)、デンソー (-5%) などの自動車セクターでした。

従業員数の増加の一部は買収によるものでした。たとえば、ABB パワーグリッド事業の買収後、欧州中東アフリカ(EMEA)の地域の日立の従業員数は 3 分の 1 近く増加しました。ソニーはまた、2021 年から 2022 年にかけて EMEA で 27% 成長しました。これは、主に英国、オランダ、フィンランド、および米国のビデオゲーム会社による複数の買収の結果である可能性があります。

これは現在、日立のグローバル従業員の 12% とソニーのグローバル従業員の 11% が EMEA 地域にいることを意味し、トップ 30 の平均の14% と比較できます。 EMEA で従業員の割合が平均よりも大幅に高いグループは、大規模な製造業のプレゼンスを持つグループである傾向があります。住友電工は東ヨーロッパと北アフリカに労働集約型のワイヤーハーネス工場を持っているとか、豊田通商はフランスの会社 CFAOを買収して以来、アフリカで大きな存在感を示しています。

全世界の従業員の 38% を EMEA 地域に持つ日本たばこ産業は、日本の最大の企業グループのトップ 10 に入り、16 位から上昇しました。しかし、現在ヨーロッパと中東のウェブサイトに掲載されている数字から判断すると、弊社の計算が過小評価であることが判明しました。約 4,000 人の従業員を雇用するロシアでの事業については、投資の一時停止以外には何も発表していません。リクルートとアサヒはまた、全世界の従業員の 30% 以上を EMEA に配置しています。リクルートは USG People、グラスドアと Indeed を買収し、アサヒはグロールシュやペローニなどのさまざまなビールブランドを数年前買収しました。

2014/5 年以降、この地域で最も拡大した企業グループは、日立 (262%)、NTT (157%)、パナソニック (89%) です。最も縮小したグループは、ホンダ (-55%)、アサヒ (-30%)、富士通 (-25%)、日産 (-22%)、リコー (-15%) です。

このリンクをクリックしすると、2022 年 EMEA の日本企業トップ 30 の PDF をダウンロードはできます。

*この数字は、三菱電機がトップ 30 に含まれたことを反映するために更新されました (2023 年 4 月 17 日)

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農業分野の技術

ロンドンの日本大使館で最近開かれた祝賀会に出席してきました。福島県産の食品と飲料の輸入規制が6撤廃されたことを祝うものでした。福島県産の酒や桃ジュースが盛大にふるまわれていましたが、出席者の多くは、むしろ福島県産の食品に手を伸ばしているように見えました。

日本食はイギリスで大人気ですが、イギリスの距離と人口規模から考えるに、福島県にとってイギリスが大きな市場になることはないのではないかと思われます。駐英大使もスピーチでそれを認めていて、イギリスの輸入規制撤廃はむしろ象徴的な意義が大きく、EUと中国へのメッセージになることを望むとのことでした。

同様に、2021年に日英経済連携協定が発効しましたが、この結果としてイギリス産の食品が日本で今まで以上に売れることはなさそうです。

とはいえ、食料自給率が必ずしも高くない2つの島国として、日本とイギリスは共通の課題を抱えているため、解決策も一緒に見つけられる可能性があります。ここしばらくの円安とポンド安は、食品、肥料、エネルギーなどの輸入価格を高騰させ、食品のインフレが加速しているため、差し迫った問題になっています。

ただし、日英の状況に違いはあります。イギリスは日本よりも食料自給率が高くて約54%。一方の日本は38%です。イギリスの主な輸入品は生鮮野菜と生鮮果物で、EUからの輸入です。特にオランダが誇る巨大な温室群で垂直水耕栽培される作物が大半を占めています。

イギリスも独自に垂直農法や水耕栽培の施設を開発することは可能ですが、エネルギーの高さが壁になっています。日本でも、主な輸入食品である小麦や大豆、油用種子をこの方法で栽培しようとすれば、エネルギー価格が壁になるでしょう。日本はレタスなどの垂直水耕栽培技術を開発していて、特に福島県では汚染された土を介入させない農法として重要です。そして現在、省エネのソリューション開発にも取り組んでいます。

日英で協力できるもうひとつの分野として、ロボット技術が挙げられます。日本大使館のイベントで、私の住むノーフォークの特産品とされるアスパラガスが福島県の特産品でもあることを知りました。アスパラガスの収穫は、EU離脱後のイギリスで問題になっています。EUからの安価な季節労働者を簡単に雇用できなくなったからです。日本も労働力が不足していて、オランダもそうです。このため、この3カ国すべてでアスパラガスの収穫ロボットが開発されつつあります。同じ技術を調整して、より複雑な農作物にも応用することができます。

水耕栽培されロボットで収穫される野菜と果物の最後の課題は、伝統的な農法で手作業で収穫される作物と比べて味が劣ることです。農業化学品や品種改良が、この解決策になるかもしれません。大使館のイベントで、ヨーロッパのこの業界に投資している日本の商社の人たちに何人も出会いましたが、その理由はここにありそうです。

Pernille Rudlin によるこの記事は、2022年10月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。

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エネルギー危機

イギリスでは、夏の鉄道ストライキ、冬の電力削減が懸念され、インフレもますます深刻化していて、1970年代に戻ったかのようです。私はまだ幼かったですし、1970年代のほとんどは日本で暮らしましたが、それでも1年ほどはイギリスに住んで、初めての停電を経験しました。ろうそくの明かりで何でもしなければならないのがとても楽しかったことを覚えています。でも、大人は楽しいとは思わなかったことでしょう。

電気やガスの公益サービスに頼らない暖房の方法を探していて、日本に住んでいた子供時代の思い出がよみがえってきました。日本のメーカーがヨーロッパで灯油ストーブを販売しているのを見つけたのです。仙台に住んでいた時に使っていたのとそっくりですが、あまり匂いはしません。

これを同年代の友達に見せたところ、彼女も1970年代にイギリスで灯油ストーブを使っていたとのことでした。いわく、当時はセントラルヒーティングなどなくて、入浴する夜だけバスルームで灯油ストーブを使ったそうです。あの頃はお風呂が週に1回というのも、まったく珍しくありませんでした。家族で同じお湯を使い回したものです。

湯沸かしは電熱器でしたが、電気代の安い夜間にお湯を沸かしてタンクに貯めておくため、1日に使えるお湯は浴槽2杯分ぐらいしかありませんでした。

今ではほとんどのイギリス人が毎日シャワーを浴びて、いつでもお湯がある状態に慣れています。ガスボイラーが温水器とセントラルヒーティングの両方を兼ねています。電力削減の懸念が言われる前から、政府は、セントラルヒーティングと温水器をガスボイラーから空気熱利用ヒートポンプに切り替えるよう促すためのインセンティブの導入を検討していました。しかし、これまでのところ、切り替えはあまり進んでいません。

設置の初期費用が高いこともありますが、室外機の設置に許可が必要になることも問題です。同じことは、ソーラーパネルの設置が進まない理由にもなっています。イギリスでは多くの人が古い家や文化財保護の指定区域に住んでいて、周囲の景観に溶け込まないような目に見える変更を家屋に加えることができません。

これは、トヨタ自動車などの日系企業が発売している住宅用蓄電池でも問題になるかもしれません。これらは車の充電にも使用するため、屋外に設置しなければなりません。駐車スペースが自宅の敷地内にあれば問題はありません。でも、多くの都市住民は自宅前の路上に駐車していますから、玄関のドアから歩道を横切って車まで充電ケーブルを伸ばさなければなりません。

このエネルギー危機が最終的には創意工夫を刺激して、この問題を解決することは間違いないでしょう。でも、この冬は、私たちの多くがろうそくと灯油ストーブのお世話になるかもしれません。

Pernille Rudlin によるこの記事は、2022 年 7 月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。

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グローバル・ブランドの管理に長けたフランス

日本ペイントホールディングスが最近、フランスの塗料メーカー、Cromologyを買収したというニュースを見て、理解するのに少し時間がかかりました。この買収は、オーストラリアにある連結子会社のDuluxGroupが新しくイギリスに設立したDGL International UKを通じて行われていました。イギリス人にとってはDuluxは親しみのあるブランドで、1960年代からオールド・イングリッシュ・シープドッグを使ったマーケティングで知られています。CMやペンキの缶でお馴染みのこの犬種がDulux犬と呼ばれているほどです。

調べてみたところ、オーストラリアでも広告にDulux犬が使われていましたが、今ではイギリスのDuluxとオーストラリアのDuluxはまったく異なる親会社の傘下に収まっています。Duluxブランドのペンキは、1930年代に初めてイギリス市場で販売されました。イギリス企業のICIが開発した塗料で、ブランド名は「Durable」(長持ちする)と「Luxury」(贅沢)を組み合わせた造語でした。1986年までには、ICIの豪州法人がDuluxの豪州法人を100%所有していましたが、1997年、親会社のICIがこの豪州事業を売却しました。

そして2008年には、イギリスのICIがオランダのAkzoNobelに買収されました。一方、オーストラリアのDuluxGroupは、2010年に独立企業としてオーストラリア証券取引所に上場し、以来、オーストラリア、イギリス、フランスの様々な塗料ブランドを買収してきました。そして

Cromologyは、欧州で4位の建設用塗料のメーカーで、20種類のブランドを有し、イタリア、スペイン、ポルトガル、フランスで製品を販売しています。明らかに日本ペイントは、Duluxをはじめ様々なブランドを中欧・東欧にも拡大する手段としてこの買収を位置付けています。

最近までフランスは、日本企業がヨーロッパに進出する際の拠点として、イギリスやドイツのように大きな存在ではありませんでした。しかし、今回の日本ペイントの動きを見て、これが変化しつつあるのかどうかを考えさせられました。日本企業がフランス拠点の多国籍企業を買収した事例としては、豊田通商による

CFAOは、日本の商社に似たような業態で、170年近い歴史を有しています。アフリカ39か国、特にフランス語圏の国に大きく事業展開しているほか、ベトナムなどかつてのフランス植民地にも進出しています。全世界の従業員数は2万1,000人以上で、トヨタ車の販売のほか、醸造酒、医薬品、小売り、自動車整備サービスなどの事業を有しています。

フランスはこれまで長年にわたり、有名ブランドをグローバルに管理してきた経験があります。しかし、以前にもこの連載で言及したとおり、多国籍企業はしばしば、事業コストが高く、労使関係に問題があるうえ、複雑な官僚主義のある国への投資には消極的です。フランスのマクロン大統領は、労働法を改革し、退職年齢を引き上げ、年金制度の経済負担を軽減しようとしてきましたが、コロナ禍でこれらの動きが停滞しています。来年4月の大統領選で再選を果たすために人気を維持しておかなければならないという事情も働いています。フランスが模様替えのムードになるのかどうかは、来年後半まで見えてこないかもしれません。

(この記事は帝国ニュースの2021年12月8日号に掲載されました)

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イギリスのEU離脱から6か月、日本企業への影響

(この記事は帝国ニュースの2021年7月14日号に掲載されました)

イギリスがEUから離脱し、その移行期間が終了して6か月になります。私自身のリサーチと経産省および三菱UFJリサーチ&コンサルティングが最近実施した調査によると、イギリスの日系企業は多くの人が予想したほどの深刻な影響は感じていません。

その一因は、日系企業が2016年の住民投票以来5年以上かけて、入念な準備で最悪の事態に備えてきたためです。経産省の調査では、大手企業(売上高100億円以上、在英日系企業の約60%)は、イギリスの事業拡大に関して中小企業よりもポジティブな見方を持っています。在庫や原材料を蓄え、物流施設や倉庫を大陸に設置し、通関手続きの増加に伴うコストを吸収するためのリソースとネットワークを持っています。今でもイギリスが重要な市場であり、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)全域の地域コーディネーション拠点として便利な場所だと見なしています。

ただし、大手企業の間でも見方にばらつきは見られます。経産省の調査では、日本の自動車メーカーがイギリス市場の先行きを厳しいと見ていたのに対し、化学、製薬、食品、電機メーカーはより肯定的に見ていました。この見方の違いは、従業員数の推移に如実に表れています。日産は2020年末時点の従業員数が前年比11%減でした。ホンダはイギリス工場を7月に閉鎖する計画で、2020年末時点の従業員数は前年比14%減です。イギリスの従業員数が2桁減になった他の企業には、野村証券、三菱電機、コニカミノルタがあります。

ただし、従業員数を正確に把握するのは以前に比べて困難になっています。イギリスのEU離脱の影響のひとつとして、ソニーやパナソニックのような大手がヨーロッパ法人をオランダやドイツに移転したためです。イギリス拠点は法人化された子会社ではなく支店という扱いになったため、従業員数などの詳細をイギリスの政府機関に申告する必要がなくなりました。

みずほや三菱UFJなど金融サービス会社の多くは以前から日本の本社またはヨーロッパ子会社の支店でしたが、ほかにも数社がこのモデルに移行し、また大陸に子会社を開設することで、今後もEUで金融サービスを提供していくための事業許可を確保しています。EUは、金融サービス会社にさらに圧力をかけて、意思決定機能と顧客対応の担当者をEUに移すよう働きかける可能性を示唆しています。

イギリスは今まで以上にサービス産業の経済になりつつあり、これは雇用を拡大させている日系企業にも表れています。NTTはグローバル本社をロンドンに移しましたし、アウトソーシングはヨーロッパ全域で人材会社の買収を続けています。

経産省の調査では、今後もイギリスの事業を拡大する理由として、英語が使えること、他の多国籍企業があること、そして司法制度の透明性が高いことが挙げられました。地域内の人と事業のネットワークはますます分散しつつありますが、イギリスは今後もそのコーディネーション拠点であり続けると思われます。

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日系企業とイギリスのEU離脱後の物流

2019年9月に帝国データバンクニュースで予測をしました。イギリスが「ハード」なEU離脱をすることになっても、日系企業は十分な備えができているだろうという予測でした。それが的中したようなので、ひとまずはホッとしています。これに際しては、日系の物流会社が重要な役割を果たしたはずです。

日本の自動車メーカーは、イギリスでの生産を停止せざるを得なくなりましたが、これはむしろコロナ禍と半導体不足が理由であって、EU離脱に伴う問題はそれほど関与していません。

JETROが昨年末に行った調査によると、イギリスの日系メーカーがハードなEU離脱に備える対策として取った主な行動は、在庫を増やしておくことでした。イギリスの他の企業も在庫を増やしました。結果として、イギリスやフランスで通関を待つトラックは、懸念されたほど増えていません。ただし、日系企業がほとんど問題に直面していない理由には、サプライチェーンの再構成もあったのではないかと思われます。実際、これはJETROの調査で日系メーカーが取った対策として2番目に多い回答でした。私の見積もりでは、イギリスの日系企業のうち少なくとも30社が、過去2、3年の間にEUのサプライチェーンのハブを大陸に移しました。

イギリスのEU離脱から最も影響を受けているのは、EU市場への販売に依存している中小のイギリス企業です。これまでは、EUにいる顧客に少量の製品でも高いコスト効果で出荷することができ、認証取得や通関の心配をする必要はありませんでした。

今では、ありとあらゆる書類への記入が求められ、食品や家畜を出荷しようものなら、保健衛生の認証を取得しなければなりません。ヨーロッパの物流会社のなかには、イギリスからEUへの輸送を受け付けていないところもあります。書類業務に対応できないという理由です。また、イギリスへの輸入品を積載したトラックを出すことにも消極的です。EUへの帰路に積むものがなければ、コストを正当化できないからです。

これらの状況は、いずれ自然に解消するかもしれません。しかし、日系企業が取った対策の多くは、決して一時的なものではなく、長期的なトレンドであって、イギリスのEU離脱の影響も長期にわたるのではないかと、私は考えています。例えば、外務省のデータによると、イギリスで製品を製造している日系企業の数は、2014年と比べて22%減少しました。イギリスの日系企業の総数は11%減ですから、製造業に減少傾向が色濃く表れているのが分かります。その多くが販社に転換し、またEUにある親会社の支社になった会社もあります。結果として、イギリスにある支社の数は31%増となり、法人化された子会社の数は16%減となりました。支社になった企業には、金融サービス業界の企業も含まれています。EUでの金融取引を継続するためです。

イギリスに新たに進出する日系企業はなおも見られますが、ほとんどはエネルギー業界かライフスタイル関連の事業で、イギリスの国内市場が目当てです。日系の物流会社は、国際輸送の専門ノウハウを持っていますがが、今後は日系企業よりもイギリス企業からの需要を見つけていくことになるかもしれません。

帝国ニューズ・2021年3月10日・パニラ・ラドリン著

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英国における日本企業の歴史 とEU離脱 (ビデオとポッドキャスト)

Pernille Rudlinは、BEERG(Brussels European Employee Relations Group)のTom Hayesと、日本企業がBrexitにどのように対応したかについて話し合っており、マーガレットサッチャーが英国をEUへの日本の玄関口として推進したことによる1980年代初頭から現在に至るまで英国/ EU /日本の貿易関係の進展を追跡しています。ビデオとポッドキャストのリンクは以下の通りです。

BEERG Byte #32 from Derek Mooney on Vimeo.

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ヨーロッパの住宅不足が日本企業に商機

在英日本商工会議所に2020年に新たに加入した数少ない日本企業のひとつが、積水ハウスでした。また、大和ハウスは2020年終わりに、オランダのプレハブ住宅会社、Jan Snelを買収すると発表しました。

積水ハウスも大和ハウスも、この事業拡大の理由として、ヨーロッパ全域の住宅不足とスキル不足を挙げています。イギリスでは間違いなく、住宅不足が長年にわたって続いています。私は大学時代の30年前にこの問題を調査しましたが、住宅が不足しているというよりはむしろ、一定水準を満たす住宅が不足していることが問題なのだと言われました。古い家はたくさんあり、なかには19世紀に建てられたものすらありますが、現代生活には不向きです。

また、最近顕著になりつつあるもうひとつの問題は、これらの住宅をたとえ改修できるとしても、人が住みたがらない場所にあることです。イギリスには今も南北格差の深刻な経済問題があり、産業の衰退がその原因です。北部の大きな市や町には雇用がなく、その代わりに崩れかかった空き家が山ほどあります。一方、南部の都市は、人口増に見合うほどの住宅が新築されていません。この結果、若い人たちは一軒家やアパートを窮屈にシェアしていて、それでもどこかに家を買うほどの貯金ができずにいます。

これらの都市に新たに住宅を建てれば問題が解決するのは明らかですが、そのための土地がありません。古いオフィス街の数区画を集合住宅に変えようとする試みは過去にありましたが、非常に低品質で不健康な住環境を生み出しました。

ロンドン郊外の通勤圏には土地がありますが、緑地や森林を残すための「グリーンベルト」として長年保護されてきました。有意義な環境配慮のように聞こえるかもしれませんが、おおかたこの地域の住民によって利用されています。この地域に住む人たちは、新しい住宅が建設されて新たに人が流れ込み、結果として住宅価格が下がるのを嫌っているためです。

私自身も、以前はそうしたエリアに住んでいました。駅から近く、乗り換えなしでロンドン中心部まで47分でした。環状道路のM25モーターウェイのすぐそばで、近くのヒースロー空港とガトウィック空港からの騒音も常にありました。これをグリーンベルトと呼んで、この地域に住宅を建設させないとは、自分勝手なうえ、現実から目を背ける行為だと思ったものです。

先頃、ロンドンに住んでいたぜんそく患者の少女の死因が「大気汚染」だったということが裁判所の判断で正式に認定されましたが、これはイギリス初、おそらく世界でも初めてのケースでした。「グリーンベルト」なる場所に住んで大気汚染に耐えていた時のことを思い出しました。積水ハウスと大和ハウスが低カーボン技術を使ってこれらの地域に空調の良い家を建てたなら、大いに歓迎されて然るべきです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2021年2月10日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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