農業分野の技術
ロンドンの日本大使館で最近開かれた祝賀会に出席してきました。福島県産の食品と飲料の輸入規制が6撤廃されたことを祝うものでした。福島県産の酒や桃ジュースが盛大にふるまわれていましたが、出席者の多くは、むしろ福島県産の食品に手を伸ばしているように見えました。
日本食はイギリスで大人気ですが、イギリスの距離と人口規模から考えるに、福島県にとってイギリスが大きな市場になることはないのではないかと思われます。駐英大使もスピーチでそれを認めていて、イギリスの輸入規制撤廃はむしろ象徴的な意義が大きく、EUと中国へのメッセージになることを望むとのことでした。
同様に、2021年に日英経済連携協定が発効しましたが、この結果としてイギリス産の食品が日本で今まで以上に売れることはなさそうです。
とはいえ、食料自給率が必ずしも高くない2つの島国として、日本とイギリスは共通の課題を抱えているため、解決策も一緒に見つけられる可能性があります。ここしばらくの円安とポンド安は、食品、肥料、エネルギーなどの輸入価格を高騰させ、食品のインフレが加速しているため、差し迫った問題になっています。
ただし、日英の状況に違いはあります。イギリスは日本よりも食料自給率が高くて約54%。一方の日本は38%です。イギリスの主な輸入品は生鮮野菜と生鮮果物で、EUからの輸入です。特にオランダが誇る巨大な温室群で垂直水耕栽培される作物が大半を占めています。
イギリスも独自に垂直農法や水耕栽培の施設を開発することは可能ですが、エネルギーの高さが壁になっています。日本でも、主な輸入食品である小麦や大豆、油用種子をこの方法で栽培しようとすれば、エネルギー価格が壁になるでしょう。日本はレタスなどの垂直水耕栽培技術を開発していて、特に福島県では汚染された土を介入させない農法として重要です。そして現在、省エネのソリューション開発にも取り組んでいます。
日英で協力できるもうひとつの分野として、ロボット技術が挙げられます。日本大使館のイベントで、私の住むノーフォークの特産品とされるアスパラガスが福島県の特産品でもあることを知りました。アスパラガスの収穫は、EU離脱後のイギリスで問題になっています。EUからの安価な季節労働者を簡単に雇用できなくなったからです。日本も労働力が不足していて、オランダもそうです。このため、この3カ国すべてでアスパラガスの収穫ロボットが開発されつつあります。同じ技術を調整して、より複雑な農作物にも応用することができます。
水耕栽培されロボットで収穫される野菜と果物の最後の課題は、伝統的な農法で手作業で収穫される作物と比べて味が劣ることです。農業化学品や品種改良が、この解決策になるかもしれません。大使館のイベントで、ヨーロッパのこの業界に投資している日本の商社の人たちに何人も出会いましたが、その理由はここにありそうです。
Pernille Rudlin によるこの記事は、2022年10月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。
For more content like this, subscribe to the free Rudlin Consulting Newsletter. 最新の在欧日系企業の状況については無料の月刊Rudlin Consulting ニューズレターにご登録ください。
Read More