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在欧日系企業

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Category: 在欧日系企業

ヨーロッパには流通革命が必要

再びホームオフィスで仕事をするようになって、家の前の通りで起きていることがよく分かるようになりました。週に一度、巨大な冷蔵トラックが騒音とともにバックで入って来て、私の家の前に駐車し、三軒隣のイタリアン・レストランに食材を配達していきます。この食材卸売会社の最寄りの配送センターは300キロも離れています。

なぜ私の家の前に駐車するのかというと、レストランの入っている建物がオフィスを50戸の学生向けアパートに改装中で、その関係の車両がレストランの前に停まっていて近付けないからです。でも、ここは16世紀に造られた通りです。キッチンやバスルームの設備50個を届ける巨大なトラックが入って来るたびに、古い建物に破損の被害が出ています。50個まとめて大型車で配送したほうが安価なことは理解できますが、施工業者はセクションごとに改装工事を進めているため、50個を一度に必要としているわけではありませんでした。

ある朝、起床後まもない6時45分頃に騒音が聞こえたので、また工事関係のトラックかと思っていたら、今度はひときわ大きな冷蔵トラックが、通りの突きあたりの広場にあるチェーン・レストランに配送していました。

イギリスのチェーン・レストラン業界には過去1年ほど逆風が吹き荒れ、店舗の3分の1を閉店したチェーンもありました。その多くは、プライベート・エクイティ会社が所有しています。ユニークなブランドの小規模なチェーン店をはるかに大きな全国規模のチェーン店にすることで大量購入によるコスト削減などのスケールメリットがあると見込んで出資したのです。

これらのチェーン店が低迷した背景には全体的な景況があった一方で、拡大とともに食事の質が落ちたことがありました。何日も前に作られた出来合いの材料を再加熱するだけになったのです。

品質や環境配慮は、エコフレンドリーな小型トラックでもっと頻繁に配達すれば向上するでしょう。ヨーロッパのほとんどのトラックはディーゼル車で、二酸化炭素排出量はガソリン車より少ないものの、大気汚染の懸念が今ではヨーロッパ全体の問題となっています。フランスとイギリスは、ガソリンとディーゼルの乗用車を2040年以降は禁じると決めました(トラックは含まれていません)。

しかし、これを実現するには、充電ステーションや物流システムへの投資が必要です。都市部の近郊に配送センターを設置して、顧客ごとに配達品をまとめ、小型の電気トラックで配送する必要が生じるかもしれません。運輸会社は、人工知能の会社と協力する必要があるでしょう。例えば、イギリスのProwlerは、複数の物流会社を検討して意思決定を最適化するソフトウェアを開発しています。

日本の会社がこの物流革命の一端を担えるかもしれないと気付いたのは、近所でいすゞ自動車(伊藤忠商事が主要株主の一社)の小型電気トラックを見かけた時でした。イギリスのタイヤ卸売会社(やはり伊藤忠が株主)が所有するトラックで、イギリスの修理工場チェーン(こちらも伊藤忠が株主)の市内の店舗に静かに配送していました。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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製造業の東への移動とドイツ

ドイツは伝統的に、日本からの投資先としてヨーロッパでの地位をイギリスと争ってきました。日本からEUへの投資の約40%は、イギリスに集中しています。が、日本の外務省によると、日系企業の数においては、ドイツがイギリスの1.5倍です(ドイツ703社、イギリス471社)[1]。

この数値の違いは、ドイツとイギリスに投資している業界の違い、さらに買収されている企業の規模の違いから来ている可能性があります。私自身のリサーチによると、イギリスの日系企業は、ドイツの日系企業に比べて従業員数が多くなっています。

これは、主要雇用主である日本の自動車メーカーがドイツには工場を持っていないのに対し、イギリスには日産とホンダとトヨタの工場があることに起因しているかもしれません。日本の自動車部品メーカーは多数ありますが、その多くはドイツ語で「ミッテルシュタント」と呼ばれる中規模の企業です。

製造業はドイツのGDPの約20%を占めていて、日本と似たレベルです。ドイツは常に技術力の高さで知られてきましたし、リスクを嫌いプロセスを重視するドイツ文化の価値観は、日本企業のマインドセットにも合致します。

かたやイギリスのGDPに占める製造業の割合は11%です。イギリス経済の80%はサービス業、特に銀行や保険などの金融サービスで成り立っているのです。サービス業には、イギリスに複数の子会社を持つ日系企業も含まれています。また、ヨーロッパ全域で融資や他の機能を提供している商社、持株会社、サービス会社なども含まれます。

このことは、日本人の在住者数がドイツよりもイギリスに多いことを説明しているかもしれません(ドイツ4万6,000人、イギリス6万3,000人)。欧州地域のリエゾンやコーディネーターとして、日本の本社と連絡する役割を果たしていると思われます。ただし、日本人の在住者数は、イギリスは減っている一方で、ドイツは増えています。

ということは、イギリスは、サービス業のメッカとしての地位をドイツに奪われつつあるのでしょうか。詳しく見ていくと、イギリス在住の日本人が減っている主な要因は、学生や学術関係者が1年前に比べて3,000人減少したことであるように見受けられます。

駐在員の数は、イギリスは2015年から2017年の間に1%減となりましたが、ドイツ、オランダ、およびヨーロッパ東部では同じ3年間に数百人の増加となりました。

イギリスとドイツへの最近の投資を見るかぎり、過去数年のトレンドはなおも続いていると言えそうです。イギリスへの投資は、地域を管轄する持株会社の設立のほか、バイオ、IT、さらにはイギリス市場向けのサービス業の会社の買収などがあります。イギリスの駐車場の運営会社の買収などがありました。ドイツへの投資は主に、電子機器部品や機械関連の卸売業に流れています。イギリスにすでに営業や生産の拠点を有している日本企業が、ドイツに営業拠点を開設するケースも含まれています。製造拠点がヨーロッパの東部へと移動しているのを受けて、販売のハブも一緒に動きつつあります。

[1] 日本とイギリスの省庁や政府関係者は通常、イギリスの日系企業を1,000社前後としています。日本の外務省の2017年の統計では、イギリスに日系企業が986社あるとされました。しかし、これには、支社、事業所、持株会社(多くの場合、どれも同じ子会社が有しています)、さらに日本国籍のイギリス永住者が現地で設立した企業、合弁会社などが含まれています。ここに記した471社とは、日本に親会社のある日系企業の本社、すなわちイギリスにおける主な子会社のみを数えた数値です。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

 

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東ヨーロッパの30年前と今

ベルリンの壁崩壊の30周年式典を見ながら、1989年のことを思い出しました。当時はロンドンで働いていて、大学卒業後1年の時でした。東欧の若者の勇気を見ているうちに、もっとグローバルでやりがいのある仕事をしたいと思うようになり、PR会社を辞めて、三菱商事に入りました。

幸い、三菱商事で出会った日本人の上司もチャレンジ精神が旺盛でした。事業機会を探しに、一緒にドイツとチェコスロバキアの各地を回りました。が、すぐに時期尚早だということが分かりました。私たちが販路を模索していたホンダ製のオートバイを買うほどの可処分所得ができるまでには、まだ何年もかかりそうでした。西欧の中古バイクを東欧に送り、修理部品を販売するほうが需要がありました。

同様に、東ドイツのガラス工場をイギリスのガラス会社と結び付ける試みも、不成功に終わりました。その工場は、昔風の重厚なカットの色付きクリスタルガラスを作っていて、顧客のニーズがあるからというよりは、自社に技術があるからという理由で、そうした製品を主体としていました。一方のイギリスの会社は、この工場に投資して品質とデザインを向上させるような意気込みはありませんでした。ドイツの工場の幹部を老舗百貨店のハロッズに連れて行き、ガラス製品の売り場を見せましたが、幹部たちは、値段が高いばかりで、自分たちのような職人技が表現された製品ではないと失望したようでした。

それから30年。今もなお、東と西の間には明らかに雇用と収入の格差があります。ただし、これは主にジェネレーション・ギャップによるものです。東欧の製造業に対しては、多国籍企業が積極的に投資してきました。日本企業も例外ではありません。人件費が安いからです。しかし、英語を話さない非熟練労働者が高齢化する一方で、スキルがあり英語を話す若い労働者は極端に不足しているという問題があります。

2000年代以降に大学を卒業した人たちの多くは、母国がEUに加盟したメリットを謳歌して、西欧でキャリアや学問を追求するようになりました。私も顧客の日系企業でそうした優秀な東欧出身者に出会いました。二人ともリトアニア出身で、見事な英語を話し、人事担当者として非常に良い仕事をしています。

東欧諸国は、様々な給付金や税制優遇で若い労働者を呼び戻そうとしています。日系の人材会社も東欧へ進出して、西欧で働いている日本語話者をリクルートしようとする日系企業を支援しています。

しかし、残念ながら、私が地元の大学で教えた夏期セミナーの日本研究クラスを受講した東欧出身の学生20人ほどを見るかぎり、日系企業への就職意欲はあまりないようでした。ワーク・ライフ・バランスとお堅い企業文化を心配しているのです。

日系企業は、富士通の事例から学べるかもしれません。非製造分野の従業員数でポーランド最大の日系企業となっている同社は、フレックスタイム、医療サービス、教育研修、CSR、スポーツ、法人割引、無料フルーツなどの福利厚生を強調しています。この背景には、業務プロセスや物流、ITサービスのアウトソース先として、ポーランド、ルーマニア、チェコ共和国などの国がホットスポットになりつつあり、人材競争が激化していることがあります。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2019年12月11日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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EU離脱の最新情報

ここ数か月ほど、イギリスのEU離脱について書くのを避けてきました。語り尽くした感があったことが、その一因です。同じように日系企業も、警告を出すのを止めたかのようです。強硬離脱という最悪の事態に備える計画は、すでに多くの会社が策定済みで、場合によっては実行している会社もあります。また、公の発言は外交官と政治家に任せるようにと日本政府から指示があったという話も聞きます。

イギリス企業も、沈黙を保っています。下手に口を開けば政府との契約を危険にさらすとジョンソン政権から釘を刺された企業も一部にあるためです。金融サービス業界では(日系企業も含めて)、代替となる在EUの法人がすでに設立されていて、事業許可も得ています。外国為替、債券、株式市場に起こるであろう混沌から利益を手にするチャンスすらあります。

とはいえ、何が起きるかを確実に見通すことは不可能です。ボリス・ジョンソン首相が期限直前になってEUが新しい条件を提示しなかったことを批判し、EU基本条約(リスボン条約)第50条のさらなる延期を要求して総選挙に持ち込もうとするという予想も、本当になるかもしれません。ポピュリズム的な選挙運動を展開して、議会の過半数支持を決定的にしたいと考えることでしょう。その後ろ盾があれば、メイ前首相よりも自信を持ってEUに新しい条件を要求し、EUが譲歩しなければ合意なき離脱だと言うことができます。

問題は、メイ前首相に提示された条件が、期待できる最善の内容だったことです。これは、人の移動の自由を廃止し、欧州司法裁判所の管轄からイギリスを除外し、またEUとの関税同盟をなしにするという、ギリギリの線引きに立った交渉の結果でした。これらの線引きをジョンソン首相が消してしまうわけにはいかないだろうと思われます。

ジョンソン首相の主な狙いは、北アイルランド国境問題をめぐる、いわゆるバックストップ(安全策)条項をなくすことであるように見受けられます。北アイルランドとアイルランド共和国との国境を開放しておく策が見つからないのであれば、北アイルランドを事実上、EUに留める条項です。このバックストップ条項を「離脱協定」から削除して「政治宣言」に入れ、すなわち後で交渉するという小手先の方法もあります。そうなれば、おそらくは現行の2年よりも長い移行期間が必要になることでしょう。

在イギリスの日系企業にしてみれば、イギリスは数か月の混乱の後、数年にわたる移行期間に入ることになるかもしれません。技術的にはEUではなく、ただしそれ以外はすべて今までどおりで、交渉が長引いた後に、強硬離脱に終わるという筋書きです。

そうなれば、日系企業がすでに講じてきた対応策がベストの対応策だったということになります。製造業はサプライチェーンを調整してイギリスを迂回し、金融サービス業はイギリスのスタッフをおおむね維持しながらEUにも本格的な拠点を持つという対処法です。そして、近年イギリス投資を拡大した日系のIT、インフラ、アウトソーシング業界の企業は、公共セクターが重要な市場ですから、EU離脱に伴って必要になる新しい体制で政府の契約を獲得するためにも、口を閉ざしておくべきです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2019年9月11日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

 

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日本好きだけど日系企業だ働きたくない

センターピープルの2019年6月19日の人事セミナーで行ったパニラ・ラドリンの「日本好きだけど日系企業だ働きたくない」スピーチのスクリーンキャストです。

 


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海外子会社の4つの管理方法

最近の日本出張中にアマゾンのオフィスを訪れ、同社に勤めている友人とランチをしました。入社したのは1年3か月前ですが、過去1年ほどでオフィスが急拡大したため、今では全社員の社歴ランキングの表で上半分に入るようになったそうです。

また、彼を含めて同社の東京オフィスで働いている外国人社員は、ほぼ全員が現地採用で、米国本社から派遣されてくる駐在員はほとんどいないとのことでした。これを聞いて私が思ったのは、業務をモニターする駐在員の管理職者がいない状態で、こんなにも急成長している子会社をアマゾンの本社はどうやってコントロールしているのだろうかということでした。

アマゾンはまた、20数年前の創業時のように、すばやく商品を市場に送り出すスタートアップのメンタリティを保つため、社内のプロセスや手順を最小限に抑えようとしています。

3つの海外子会社の管理方法

これまで様々な多国籍企業とその子会社に社内外の両方の立場からかかわってきましたが、海外子会社の管理方法は大きく3つに分けられます。営業力を重視する米国企業は、子会社に数値目標を課してコントロールする傾向にあります。子会社の社員や管理職者が目標を達成すればボーナスを支給し、目標に到達しなければ解雇します。米国本社でない多国籍企業でも、多くがこのシステムを使用しています。数値は誰でも簡単に理解でき、言葉に左右されないからです。

2つ目の管理方法は、米国と欧州の多国籍企業が用いている方法で、コンプライアンスを重視します。規則やプロセス、システムを厳密に導入して、命令系統のヒエラルキーも明確にすることで、誰がどの事業の責任と権限を握っているかを全社員が把握して行動します。

3つ目の方法は、日本企業のほか、「ミッテルシュタント」と呼ばれるドイツの家族経営の企業によく見られます。“家族”がコントロールする、すなわち本社から内輪のメンバーが子会社に赴任して、現地で何が起きているかを監視すると同時に、会社の文化を浸透させようとするスタイルです。

アマゾンの管理方法

東京で会ったアマゾンの知り合いによると、同社は採用過程で厳密なプロセスを踏むことにより、本社の理念に沿った行動を徹底させようとしているとのことでした。採用に際しては、複数の社員による面接を数回行って過去の経験を尋ねることで、候補者のマインドセットを知ろうとします。

しかし、この方法は、買収の結果として海外に子会社ができた場合や過去何十年にもわたって海外の子会社がある場合は、実践が難しいでしょう。日本の本社に浸透している価値観や行動とは異なる文化を持った古くからの社員がすでに大勢いるのです。

それに、十分に現地化して顧客に近い立場で事業展開しているのであれば、その多様性がもたらすメリットもあります。そうした海外子会社の社員に画一的な行動や価値観を押し付けるのは間違いと言えるでしょう。

いずれにしても、これから海外の事業買収や子会社の開設をしようとする日本企業には、グローバルに理解しやすい明確な企業理念と価値観を打ち出したうえで、それに則って海外の社員を採用し昇進させることを、ぜひ心がけてほしいと思います。

 

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

 

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ヨーロッパの人材業界

私の会社では在イギリス日系企業の社員数ランキングを管理していますが、最近ランクインした2社はいずれも人材業界の企業で、トラスト・テックとアウトソーシングでした。両社とも過去4年以内にイギリスで複数の人材会社を買収し、ドイツ、オランダ、ポーランドでも人材会社を買収してきました。

この動きを見ていて、13年前のことを思い出しました。イギリスと東欧で複数の企業を買収した別の日系人材会社のコンサルタントをした時のことです。買収したヨーロッパの企業が互いの連携を高め、統合的な戦略と構造を持つための方法を探してほしいと依頼されました。

しかし、ヨーロッパの人材市場はそれぞれ非常にローカルで、独自の慣習と法令があることがすぐに分かりました。最終的にその会社は、日本でさらに大手に買収され、国内市場を重点とする戦略を取るようになったため、ヨーロッパ市場から撤退しました。

今回ヨーロッパ事業を拡大させた2社の戦略的な意図は、売上高拡大という以外にあまり明確ではありません。海外で事業展開している日系企業の顧客に対して製造およびIT分野の人材を提供するとしていますが、これはヨーロッパよりもむしろアジアでのことと思われます。

ヨーロッパの日系メーカーは製造拠点を東へ移しているため、ポーランド、チェコ共和国、スロバキアなどのほうが需要があるでしょう。

イギリスは現在、エンジニアリングとITの人材が不足していています。EU離脱によってEU加盟国の国籍者がイギリスでの在住許可や労働許可を制約されることになれば、さらに悪化すると見られます。EU加盟国からイギリスへの人口流入はすでに劇的に減少し、医療、建設、食品加工などの業界で労働力不足を引き起こしています。

EU離脱の影響を別にして、イギリスの人材市場で過去10年間に起きた主な変化と言えば、規制強化と法令順守の負担増です。日系の人材会社が突如としてイギリス最大の日系雇用主のランキングに食い込んだ理由は、派遣社員が今の法令では人材会社の社員と見なされるようになり、年金や他の福利厚生の受給資格を有するようになったからです。このため人材会社は、賃金の男女差の報告要件やEUのGDPR(一般データ保護規則)などを順守しなければなりません。

業界関係者によると、ヨーロッパの人材会社には単に人材を見つけて紹介する以上のことが求められています。人材不足や多様な人材雇用のプレッシャーがあるため、データから洞察を得て、創意工夫を凝らすことで、顧客企業における役職と職務、および福利厚生や報酬体系の変更を支援し、雇用主としての魅力を高められるようサポートしていく必要があります。

これには、顧客企業に深く介入し、現地市場の人材プールにも精通する必要があります。このように考えていくと、日系の人材会社がヨーロッパの業界にどのような付加価値をもたらせるのか、ヨーロッパ市場から何を学べるのかは、いささか不明です。ということは、やはり売上高拡大だけが買収の目的なのかもしれません。

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信頼

私の仕事の目的を一文で言い表すならば、「文化を越えて信頼を築くこと」と言えるかもしれません。でも、こう言うと、信頼をどのように定義するのか、どうやって築くのかという疑問が自ずと浮上します。

これまでの経験を分析した結果、多国籍企業で信頼を築くには5つの要素が必要と言えそうです。それを順番に説明しましょう。

  1. コミュニケーション

共通の言語を持つことは非常に重要です。でも問題は、西洋人にとって日本語は最も難しい言語のひとつであり、また日本人も英語に対して同じような気持ちを抱いていることです。日本の企業は、外国人社員の日本語学習を支援し、また英語でのコミュニケーションを上達させるべきです。英語を公用語にしたり、最低レベルの英語を社員に求めるだけでは不十分です。経営陣がビジョンと戦略と計画を今よりももっと効果的に英語で伝えられなければなりません。

  1. 共通の関心

共通の関心を見つけ、関心の度合いに違いがあると理解することで、交渉に安定した基礎がもたらされます。このため私はいつも、日本人駐在員にヨーロッパの同僚やパートナーと世間話をするよう勧めています。共通の課題やニーズがあることが分かれば、共通の理解ができ、妥協や合意に至りやすくなるからです。

  1. プロセスと規則

信頼のレベルが低い場合は、法律や規則やプロセスが安全策として必要になります。しかし、日本企業もEUも、時として官僚主義やプロセスにとらわれすぎる嫌いがあります。信頼されるには、規則やプロセスに従っていることを示さなければなりませんが、究極的にはそれだけでは不十分です。どのように物事を進めるか、意図は何なのか、相手に対してどのようにふるまうかも、同じくらい重要です。

  1. 確実性

誰かを信頼するということは、その人が法律を守るだけでなく、言ったことを本当にやってくれると信じられることを意味します。日本企業にとって、これは定義が難しいかもしれません。ファミリーのようなスタイルの企業文化があり、全員の役割が曖昧で、職務上の責任が明文化されておらず、年功序列で動くためです。会社というファミリーのために、誰もが何であれ必要な行動を取るものとされています。家族の一員のためであれば、規則を曲げることもあります。しかし、この曖昧さは、多様な文化が混在する組織では通用しません。

  1. ビジョン

これゆえに、会社がどこへ向かっているのか、どのように見られたいのかに関する明確なビジョンが必要になります。このビジョンを社員に伝えて、チームの一員であるという帰属意識を社員に持ってもらう必要があります。そうすることで、この価値観が指針となって、ビジョンを達成するためにどのように行動すべきかが分かるようになるでしょう。与えられた規則やプロセスの枠内で様々な目標に達することだけがビジョンであって、社員が主体的に会社の価値観に参加していなければ、日本とヨーロッパの両方の企業で起きてきたようなスキャンダルが今後も続き、社会や文化を越えた信頼にとって悲劇的な結果を招くでしょう。

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国際貿易は常に改修が必要な橋のよう

どこまでやっても終わりがない仕事のことを、イギリスでは「フォース橋にペンキを塗る」ような仕事だと言います。フォース橋というのは、エジンバラ近郊に19世紀に建造された全長2.5キロ近い鉄道橋です。カンチレバー橋と呼ばれる設計で、非常に特徴ある見た目のうえ、赤い塗装が施されています。片端から塗装していくと、全部終えるまでには最初の頃に塗装した部分にまた塗り替えの時期が来るとされています。

イギリスのEU離脱は、イギリス企業にとって、まるでフォース橋のような状況になってきました。当面の決定事項に対応するための準備をようやく終えたと思ったら、新しい交渉が始まって、また新たな可能性が生じるのです。

私が作成している在英日系企業のデータベースも、やはりフォース橋です。現状を明確に把握したと思うそばから、追加すべきデータが出てきます。政府が提供している無料のオンラインデータベース「Companies House」には、イギリスで法人化されている企業すべてが毎年報告書を提出しなければなりません。一定規模を超えていれば、リスク要因を特定してその緩和策として何をしているかも説明する必要があります。

私はこの報告書を使って、従業員数、売上高、資本金など、他から入手できる情報を照合しています。ですから、イギリスには日系企業(支店を含む)が1,000社以上あり、その従業員数は16万人超、総売上高は1,000億ポンド前後だということが、ある程度の確信をもって言えるのです。また、日系企業がイギリスのEU離脱のためにどのような策を講じてきたかも分かります。

その多くはすでに報道されてきました。物理的に製品を動かしている企業、例えば自動車、製薬、エレクトロニクス業界などの企業は、すでに在庫や倉庫を拡大し、物流の見直しを行いました。金融や製薬のように多数の規制要件の適用対象となる企業は、EU域内の事業拠点を強化して、サービスや製品に関する事業許可をEUに申請しました。

組織構造上の変更も導入されています。大手日系企業の多くは、以前から欧州事業を持株会社体制にして、たいていは持株会社をイギリス、オランダ、ドイツのいずれかに置いてきました。エレクトロニクス業界の企業や商社は、イギリス拠点をEUにある持株会社の支店や「コミッション制のエージェント」に変更することで、契約主体が在EUになるようにしています。また、イギリスに留めておく資本を減らした企業もあります。

これらの対策が即座に雇用に劇的な悪影響を及ぼしているわけではありませんが、長期的にはイギリス企業の影響力を弱め、予算も縮小させると、私は懸念しています。

とはいえ、在英日本商工会議所の新年会のムードは、非常にポジティブでした。スピーチに立った人たちは一様に、日本とイギリスには共通の利益が多数あり、これからも共に前進していかなければならないと訴えていました。在英日本商工会議所の加盟企業数は、過去最高に達しています。食品、小売り、公共事業など、主にイギリス国内市場の開拓を目指して新たに進出してくる日本企業が増えているためです。この新年会でも、2018年に初のイギリス支店をロンドンに開設した青山フラワーマーケットが見事なフラワーアレンジメントを提供していました。

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ヨーロッパのスキル不足

イギリスの人事教育協会と人材会社のAdeccoが1,000社を対象に行った最近の調査で、イギリス企業の10社に7社が欠員補充に困難を来たしていて、40%が1年前よりも必要な人材を見つけにくくなったと回答しました。

この状況を悪化させているのが、イギリスのEU離脱です。イギリスで働いている外国出身者は、前年から5万8,000人減少しました。その前の1年間は26万3,000人増だったのですから、対照的な傾向です。これは主に、EU加盟国からイギリスに来る労働者の減少に起因しています。

しかし、人材不足はイギリスだけの問題ではありません。日本貿易振興機構(ジェトロ)による2017年末の調査によると、ヨーロッパの日系企業が挙げた最大の事業課題が「人材確保」でした。これにはドイツやオランダだけでなく、ハンガリーやチェコ共和国などの中欧と東欧の国が含まれています。

では、日系企業は、同じ熟練労働者の獲得を目指す現地企業とどうすれば競争できるのでしょうか。

雇用主としてのブランド力を訴える方法を日系企業に説明する際に私がよく使うのが、フォンス・トロンペナールス氏とチャールズ・ハムデン–ターナー氏が開発したモデルです[1]。ヒエラルキーの度合いとタスク志向か関係志向かに基づいて、企業文化を「誘導ミサイル」、「エッフェル塔」、「インキュベーター」、「ファミリー」の4つに分けるマトリックスです。

誘導ミサイルは、典型的な米国流のセールス志向の組織で、目標、成果、報酬などで社員の意欲を引き出します。

エッフェル塔は、ヒエラルキーの度合いが高い組織で、組織構造を重視します。社員にとってのモチベーションの源は、組織内での地位と昇進の見通しです。

ヨーロッパの多くの人は、エッフェル塔のスタイルの会社に慣れているため、日系企業に入社すると、キャリアパスが定義されていないうえ、明確な戦略的方向性すらないように見えることに戸惑います。

他のヨーロッパの社員、特に研究開発、クリエイティブ、IT、設計エンジニアリングなどの分野の社員は、インキュベーターのスタイルに馴染んでいます。このタイプの組織では、主な動機は報酬でも地位でもなく、成長すること、そして自分のスキルを活かしてイノベーションを起こすことです。

日本の会社のほとんどは、ファミリーのスタイルに属します。社員は家族の一員として、一族の存続と評判に寄与したいと考えます。こスタイルの会社では、報酬や地位で社員を動機付けることは困難です。報酬や地位はパフォーマンスではなく年功に基づいているからです。

ヨーロッパの日系企業は、福利厚生が良いけれども給与は平均的という評判を持っています。また、日本人でなければ(つまり家族の一員でなければ)どこまで昇進できるかに限界がある、という感覚もあります。

ヨーロッパの人にとって日系企業の魅力は、他の企業とは異なっていて興味深い点、そして良きコーポレート・シチズンと見られている点にあります。しかし、ヨーロッパ出身者であっても家族の一員になれるのだと感じられなければなりません。人材を確保したいと思うのであれば、日本の本社へ赴任させるなどして、会社のビジョンや価値観を理解できるようサポートする必要があります。

 


[1]Riding the Waves of Culture: Understanding Cultural Diversity in Business, Fons Trompenaars & Charles Hampden Turner, (Nicholas Brearley: 2003), 159. 邦訳版『異文化の波 ― グローバル社会:多様性の理解』(白桃書房)

Pernille Rudlinによるこの記事は、2018年12月21日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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