日本企業による海外買収は恐るるに足らず
ロンドン証券取引所の子会社、Refinitivによると、過去2か月間に海外の企業に買収されたイギリス企業が史上最多になりました。買収されているのは主に、評価額が実価を下回っているサービス企業で、保険、カジノ、セキュリティなどの業界企業です。これらの買収は、好ましい投資というよりは、侵略や襲撃であるかのように説明されています。買い手の多くがプライベート・エクイティ会社で、SPAC(特別買収目的会社)でもあるためです。
SPACは、もともと米国で始まりました。投資家のグループが会社を設立して、株式市場で資金を調達し、その資金を元手に別の事業会社を買収します。その目的は、最終的にその事業会社を売却して利益を挙げることです。シティ・オブ・ロンドンでは現在、こうした企業をもっと引き付けるべきかどうかが議論されています。
これは単に新たな形式の資産収奪に終わる可能性があります。日本でハゲタカファンドと呼ばれるものに似ています。
日本企業も、再びイギリスやヨーロッパの企業を買収し始めています。パンデミックでデューデリジェンスが難しくなり、約1年間は買収が滞っていましたが、このところ動きが見られます。ルネサスエレクトロニクスは、イギリスとドイツを拠点とするチップ設計会社のDialogを買収しようとしています。西本Wismettacホールディングスは、冷凍水産品や麺類を輸入するスコットランドのSco-Froの買収を発表しました。リコーは、ヨーロッパでの買収資金を含む5年計画を発表しました。
言うまでもなく、これらの買収は、プライベート・エクイティやSPACによる買収とは非常に異なる性質の買収です。私のリサーチによると、過去5年以内に日本企業に買収されたイギリス企業では、社員数が平均して10~25%増加しています。日本企業は、海外で成長して収益を挙げていくための買収を追求しようとします。また、新規の設備投資や、追加買収をはじめとする他の形式の事業拡大をする意欲もあります。
最近発表されたイギリスの予算には、資本投資のためのさらなるインセンティブが盛り込まれました。2年間にわたる税制優遇で、投資の130%を課税所得から控除することができます。これは、法人税が現在の19%から2023年に25%に引き上げられる影響を緩和することを目的としています。ただし、これが2023年に予想される選挙と同じタイミングであることを皮肉る声もあります。経済が十分に回復すれば、また将来減税が発表されるだろうという見方です。
いずれにしても、日本企業にとっては、法人税率の低さが魅力というわけではありません。特にタックスヘイブン対策税制の改正後、これは理由にならなくなっています。日本企業は、成長を目指して長期的に投資していくつもりであって、リストラして短期に利益を挙げる意図ではないことをきちんとコミュニケーションするかぎり、イギリスでもヨーロッパでも歓迎される投資家になるはずです。
帝国ニューズ・2021年4月14日・パニラ・ラドリン著
Rudlin Consultingとジャパン・インターカルチュラル・コンサルティングは、M&A後の企業文化統合について、多くの日本およびヨーロッパの企業と協力してきました。詳細については、Pernille Rudlinにお問い合わせください。
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